月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
スポーツ紙で見る奥川恭伸の熱投。
感動を呼んだ美談の説教と真相。
posted2019/08/24 08:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Kyodo News
夏の高校野球をスポーツ紙はどう伝えたか。
まずは決勝戦前の履正社の練習について。
『奥川剛球イメトレ完璧 履正社 攻略へ巨大スクリーン投影』(日刊スポーツ8月22日)
《ナインの目の前には、映画が見られるほどの巨大スクリーンがあった。そこに映し出されていたのは、“バーチャル奥川”。(略)衝撃度満点のアップ映像だった。そんな迫力映像を前に、45分間全員でバットを振り込んだ。》
この練習のどこに注目かって「スポーツ紙映え」もしてるところだ。このド派手感、わかりやすさ。スポーツ紙と高校野球の相性の良さを再確認。
特訓の効果もあったのだろう。履正社は今春のセンバツ、6月の練習試合で完敗した星稜のエース奥川恭伸投手にリベンジ。
スポーツ紙のピークは智弁和歌山戦。
その星稜、各紙に載った松井秀喜さん(星稜OB)の言葉がよかった。
《今までの星稜だったら、智弁和歌山に負けて終わり。甲子園での死闘は必ず敗者になった。あの試合に勝てたことは、今までの星稜の歴史を変えてくれたと思います。》
《でも、ここで優勝できないのが、星稜。母校のそういうところも大好きです。》
松井も言及した星稜と智弁和歌山の一戦(17日)は、スポーツ新聞的にもピークの1つだった。
延長14回タイブレークの末に星稜がサヨナラ勝ち。奥川投手は165球を投げ、23三振を奪う。
翌日1面で報じた新聞を並べてみると、
『涙の甲子園新伝説 奥川23K』(スポニチ)
『涙!感動の165球!新伝説生み出した 奥川』(デイリー)
『奥川に泣けた 23K 154キロ連発』(日刊スポーツ)
『泣いた 耐えた 十四回タイブレーク 奥川23K』(サンスポ)
『右脚つっても165球投げきった 奥川23K』(東京中日スポーツ)
「涙」と「感動」がここに集結!