月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
スポーツ紙で見る奥川恭伸の熱投。
感動を呼んだ美談の説教と真相。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byKyodo News
posted2019/08/24 08:00
17日の3回戦・智弁和歌山戦で完投した奥川。大会を通じて計512球を投じ、準決勝までの自責点は0と圧巻の活躍を見せた。
あの錠剤を渡した球児とは……。
さて先ほどの「奥川への智弁和歌山からの差し入れ」話だが、実はこんなオチがあった。
『「球児の友情」のウラに“球児アリ”』(8月19日)
これはデイリースポーツの「トラ番25時」というコラム(和田剛記者)。
「実はあの錠剤は球児が中谷監督に差し入れしたものらしいですね」
……球児が差し入れって当たり前じゃないか?と思ったら、ここで言う球児とは「阪神・藤川球児」だった!
《智弁和歌山の中谷監督は元猛虎戦士。阪神で1年後輩に当たる藤川球児がチームへ差し入れしたという。》(デイリー・同)
なるほど。だから記事冒頭に「球児同士の敵味方を超えた友情秘話の裏には“球児”の存在があった」と書いたのか。でもややこしい!
しかしこれぞ「美談の真相」である。トラ番記者だからこそ仕入れた情報だ。スポーツ紙のこういう小ネタが大好物です。
ゆで卵好きの坂東英二は?
最後に。
奥川投手のスケールをどう例えるかが各紙興味深かった。
『中谷監督 奥川に脱帽 「田中将大のようだった」』(デイリー8月18日)
智弁和歌山の監督は「田中将大」。
『低め直球伸び 松坂みたいだ』(スポーツ報知8月18日)
元・横浜高校監督の渡辺元智氏は「松坂大輔」。
そしてスポニチは、
『奥川は半熟卵 板東英二』(8月18日)
《完全な煮抜き(固ゆで)卵になるまで、大人が割らないよう見守ってあげて》
ゆで卵好きの板東英二が登場。実は板東さんは夏の甲子園の奪三振記録保持者でもある。奥川の活躍はこんなレジェンドまで引っ張り出したのだ。
板東英二さんとともに奥川投手の大成を願いたい。
以上、「月刊スポーツ新聞時評」高校野球読み比べでした。