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イニング平均球数わずか「12.39」。
奥川恭伸の賢さは甲子園史に残る。 

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/08/25 11:50

イニング平均球数わずか「12.39」。奥川恭伸の賢さは甲子園史に残る。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

150km超のストレート、鋭いスライダー……それ以上に奥川恭伸が凄かったのは、少ない球数で打者を牛耳る投球術だ。

去年、今年ともに凄い奥川の数値。

 何より注目すべきは、星稜・奥川恭伸のP/IP=イニング当たりの投球数だ。プロ野球の投手コーチが「15球なら合格点」とするこの数値において、奥川は12.39。極めて効率の良い投球をしていたのだ。制球力が抜群なうえに、キレの良い球でどんどん打者を追い込んでいったからこその結果である。過去5年の各投手との数字を比較しても、奥川はずば抜けている。

 奥川は田中将大(現ヤンキース)に似ているといわれるが、田中も高校時代からP/IPが15を下回る優秀な投手だった。しかし準優勝した2006年夏は52回2/3で742球、P/IPは14.09。今季の奥川のすごさがわかる。

 奥川は智弁和歌山戦でタイ・ブレークも含めて14回を投げ、球数は165球を数えた。プロ野球でもほとんど見られない球数ではあるが、P/IPが15程度の投手であれば210球を超えていたはずだ。

 ちなみに奥川は2018年夏も投げているが、このときも2試合12回を152球、P/IPは12.67だった。

効率的な投球なら、肩ひじを守れる。

 奥川は、球速こそ大船渡の佐々木朗希よりも遅いが、持って生まれた制球力の良さ、効率的な投球ができる能力は、故障さえなければ今後、上のレベルで大いに発揮されるはずだ。

 奥川のように効率的な投球ができる投手は、長いイニングを投げるように命じられても、自分で自分の肩ひじを守ることができる。この投球術は、簡単に身につかないだろうが、すべての高校生投手が意識すべきだろう。

 そういった意義も踏まえて、今季の甲子園、最大の収穫は超クレバーな好投手・奥川恭伸だと言えよう。

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