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イニング平均球数わずか「12.39」。
奥川恭伸の賢さは甲子園史に残る。 

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/08/25 11:50

イニング平均球数わずか「12.39」。奥川恭伸の賢さは甲子園史に残る。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

150km超のストレート、鋭いスライダー……それ以上に奥川恭伸が凄かったのは、少ない球数で打者を牛耳る投球術だ。

投球総数と1イニング平均投球数。

(3)1大会の個人投球総数

 以下、過去5年の1大会の個人での投球総数5傑とP/IPという数値である。このP/IPはイニング当たりの平均投球数を示す。こちらにもプロ入りした選手が名を連ねる。

<2015年>
680球 佐藤世那(仙台育英)13.69
445球 松本皓(早実)15.34
432球 成田翔※(秋田商)16.20
405球 比屋根雅也※(興南)15.58
392球 小笠原慎之介※(東海大相模)15.68

<2016年>
616球 今井達也(作新学院)15.02
527球 大西健斗(北海)13.51
473球 河野竜生※(鳴門)16.89
423球 鈴木昭汰※(常総学院)15.48
400球 寺島成輝※(履正社)15.58

<2017年>
534球 綱脇慧(花咲徳栄)14.70
474球 平元銀次郎※(広陵)16.93
432球 長谷川拓帆※(仙台育英)14.24
430球 山本雅也※(広陵)17.44
347球 碓井涼太(天理)13.36

<2018年>
881球 吉田輝星(金足農)17.62
607球 山口直哉(済美)13.90
512球 柿木蓮(大阪桐蔭)14.22
489球 鶴田克樹(下関国際)13.58
449球 河村唯人※(日大三)17.49

<2019年>
594球 清水大成※(履正社)16.65
512球 奥川恭伸(星稜)12.39
355球 荒井大地(高岡商)15.21
352球 林勇成(作新学院)14.27
337球 不後祐将※(中京学院大中京)17.43

吉田輝星が突出している。

 2014年以降、1大会で700球以上投げた投手は2018年の金足農・吉田輝星(881球)、2014年の三重・今井重太朗(814球)の2人だけだ。全体に球数が減少する傾向にある中、こうして見ても吉田輝星が突出している。

 2019年は600球を投げる投手もいなくなり、400球以上投げた投手も2人だけとなった。甲子園に限定すれば、1人の投手への負担は確実に減少している。

 とはいえ地方大会では今夏も200球以上投げた投手が出ている。「球数制限」の問題については個々の指導者の良心にゆだねることはできないだろう。

【次ページ】 去年、今年ともに凄い奥川の数値。

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