酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イニング平均球数わずか「12.39」。
奥川恭伸の賢さは甲子園史に残る。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/25 11:50
150km超のストレート、鋭いスライダー……それ以上に奥川恭伸が凄かったのは、少ない球数で打者を牛耳る投球術だ。
過去5年の1試合最多球数は?
(2)1試合当たりの最多投球数の推移
以下、過去5年間の個人での1試合最多投球数5傑で、※は左腕。プロ入りした選手も名を連ねている。
<2015年>
161球 成田翔※(秋田商)3回戦
161球 小笠原慎之介※(東海大相模)決勝戦
153球 比屋根雅也※(興南)準々決勝
149球 光田悠哉※(大阪偕星学園)1回戦
143球 福谷優弥※(鶴岡東)2回戦
<2016年>
187球 アドゥワ誠(松山聖陵)2回戦
183球 平林弘人(市尼崎)1回戦
177球 堀瑞輝 ※(広島新庄)1回戦
164球 藤本海斗(九州国際大付)1回戦
153球 渡辺悠 ※(尽誠学園)2回戦
<2017年>
172球 久保田蒼布(藤枝明誠)1回戦
160球 増居翔太※(彦根東)1回戦
150球 山下輝※(木更津総合)1回戦
150球 市川睦※(二松学舎大付)3回戦
148球 碓井涼太(天理)3回戦
<2018年>
184球 山口直哉(済美)2回戦
179球 西純矢(創志学園)2回戦
176球 木村光(奈良大付)2回戦
164球 吉田輝星(金足農)3回戦
157球 吉田輝星(金足農)1回戦
<2019年>
170球 高木要※(立命館宇治)2回戦
165球 奥川恭伸(星稜)3回戦
160球 前佑囲斗(津田学園)1回戦
155球 杉戸理斗※(明石商)3回戦
154球 西野知輝※(鳴門)1回戦
エースの負担を減らす傾向にはある。
この数字を見る限りでは、投手1人当たりの投球数には大きな変化がないように見えるが、各年の1人で8イニング以上を投げた投手の数は、
2015年 38人
2016年 44人
2017年 34人
2018年 54人
2019年 34人
となっている。今年は昨年に比べて長い投球回を投げた投手は大幅に減ってはいるが、実は2017年と同数だ。
筆者が調べたところ、2013年春に済美の安樂智大(現楽天)が選抜で772球を投げて以降、高校野球界は「投手の分業」、「エースの負担を減らす」傾向になっている。今季は再びその傾向に戻ったと言えよう。
反対に言えば2018年が異質な年だったのだ。