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川島永嗣、欧州10年目の意味。
「この挑戦を心から楽しむ」 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byGetty Images

posted2019/08/25 11:30

川島永嗣、欧州10年目の意味。「この挑戦を心から楽しむ」<Number Web> photograph by Getty Images

欧州でのプロ生活が10年目、フランスで4シーズン目を迎える川島永嗣。36歳となった今も、さらなる成長を求めて歩みを止めない。

メンバー外でも、自分を見失うことはない。

――ピッチに立つ感覚については? ウルグアイ戦、エクアドル戦の仕事ぶりは見事でした。

「ストラスブールの最終節もそうだったけれど、特別な感情はなかったですよ。スタンスは変わらない。というか、その時に持っている以上のものは出せないから」

――5月のブログでは「試合に出るためだけに努力してきたつもりはない」と書いていました。

「“だけ”ではないですよね。試合に出ることは、選手として直接的な目的の1つです。ただ、僕の中では試合に出ることは当たり前のことで、『自分は夢を追いかけるから』と試合に出ないままでいいわけじゃない。

 僕は今でも、試合に出るのが当たり前という感覚で毎日を過ごしていますよ。だからこそ、1試合に出たところで感慨に浸ることもないし、感情的になるようなことじゃない。

 メンバーを決めるのは監督だけど、その瞬間瞬間にどういう決意をするか、どういう覚悟を持つかは完全に自分次第じゃないですか。自分自身を決めるのは自分。監督じゃない。だからたとえ試合に出られなくても、自分自身を見失うことはない。

 もちろん、シーズン中に何度も監督と話をしました。それでも、毎週のようにメンバー外を告げられてましたけど(笑)」

「36歳日本人GK」に対する欧州での評価。

――コパ・アメリカが終わってすぐに、Jリーグのクラブが獲得に動くというニュースもありました。正直に言うと「そうだよな」と思っていたので、「ストラスブールに」という連絡をもらった時は、そりゃあもうびっくりしました。

「いや、正直、考えました。真剣に。この年齢で、このタイミングで、ちゃんと評価してもらって、いいチャンスだと思った。

でも、やっぱり、後悔したくなくて。やり切れるところまでやり切って、それで終わりたいと思ったんです。今までだって、キレイな道を進んできたわけじゃないから」

――ヨーロッパに残るということは、つまり、また、出場機会が限られる可能性が高い環境に身を置くということでもありますよね。川島選手は、ヨーロッパのマーケットで“日本人GK”が公平に評価されることの難しさを十分すぎるほど理解している。実際に、移籍市場のゴタゴタでは心が壊れそうになる経験もした。単純な疑問として、「それなのにまだヨーロッパで?」と思いました。

「それまでずっと試合に出ていなかった選手が、1つでも試合に出ると『また試合に出たい』と思いますよね。それは、選手としての純粋な思いとして僕にもある。でも、ただ試合に出るためとか、目先のことだけを考えて判断するのは自分らしくないというか、自分的に正しくない気がして」

――よくわかるけれど、重ね重ね、このタイミングでそう言えるところがすごいなと。

「俺、頭おかしいですかね?(笑)

 自分の夢を追いかける上で、転機とか、大きな判断を求められるタイミングって必ずあると思うんですよ。ずっと夢を追っていて、そこにたどり着ける可能性が1%あることを確信して、挑戦を続けてきたとする。今までその1%に懸けてやってきたのに、その可能性を、自分の決断でゼロにしていいのか。そういうことなんです。

 どうなるかなんて、わからないんですよ。もう年齢なんて関係ないし、自分でも気にしてない。とにかく可能性がゼロになるまでやればいいじゃんというだけで、36歳になったから、1年間ずっと試合に出られなかったからという理由で、自分から可能性をゼロにすることはない。

 でもね、知ってると思いますけど、この年齢で、GKで、日本人で、ヨーロッパでクラブを探すのって本当に簡単じゃないんですよ。今回ストラスブールが2年契約を提示してくれて、クラブからの信頼もすごく感じたというのもあります。だって、自分は外国人選手ですから」

【次ページ】 川島がヨーロッパに留まる理由。

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