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「攻撃的2番」にバントの選択肢は?
大味化する日本野球に抱く懸念。 

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byKyodo News

posted2019/08/24 11:40

「攻撃的2番」にバントの選択肢は?大味化する日本野球に抱く懸念。<Number Web> photograph by Kyodo News

強打者マーティンを2番に置いた戦術は、相手に与える脅威と同時に自分たちの選択肢を狭める危険性もはらんでいた。

駆け引きを楽しむこと。

 もう10年も前になるだろうか。

 かつて千葉ロッテのリードオフマンとして活躍し、現在はBCリーグ・栃木ゴールデン・ブレーブスでプレーする西岡剛が、当時、1・2番を組んでいた堀幸一とのコンビについて、「いろんなアイデアがある。攻撃にバリエーションがあって、野球をするのが楽しかった」と話していたのを思い出す。

 こういう駆け引きを楽しむのも野球の醍醐味である。

 この試合が行われる2週間前、場所も同じ東京ドームで行われた第90回都市対抗野球の決勝戦では、これが野球の醍醐味と思えるこんなシーンが見られた。

 4回裏、得点は2-2の同点で無死一、二塁。

 JFE東日本・土屋遼太のバントは、一瞬、小飛球になって、投手、捕手、三塁手の前に転々とした。ボールの勢いを殺し、そこまで悪くないバントだった。

 しかし、これをトヨタ自動車の一塁手・沓掛祥和が猛チャージをかけ、その勢いのまま処理すると、スタートが遅れた二塁走者を三塁で封殺。味方投手のピンチを救った。

「超攻撃的野球」とは何か。

 沓掛は言っていた。

「僕がバントする側だったら、あれだけ(野手に)前に来られたらそうそうバスターに切り替えることは出来ないと思うんです。バントだったらバントで、プレッシャーをかけた方が相手も嫌というのもあるし、(実際に)アウトにもなるので」

 沓掛は大会期間中、バント策が考えられるあらゆる場面で、絶えずチャージをかけ、相手打者にプレッシャーを与え続けていた。

 打者の土屋も「より上手く転がそう」と考えたはずだし、それがプレッシャーにもなっただろう。沓掛はバスターに切り替えられる怖さはお構いなしに、ただ走者を先に進めさせない。彼らは駆け引きを楽しんでいたのだ。

 バントなのか、バスターなのか、一転して強攻策に出るのか、そうやって攻撃のバリエーションが増えていくし、そもそも「超攻撃的野球」とはそうした選択肢のある中で成り立つものではなかろうかと考える。

【次ページ】 一発長打、攻撃的2番もいいが……。

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