球道雑記BACK NUMBER
「攻撃的2番」にバントの選択肢は?
大味化する日本野球に抱く懸念。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/08/24 11:40
強打者マーティンを2番に置いた戦術は、相手に与える脅威と同時に自分たちの選択肢を狭める危険性もはらんでいた。
選択肢を奪ったバントミス。
これよりちょうど一週間前の8月6日、ZOZOマリンスタジアムでのソフトバンク戦。2-2で延長戦に突入した10回裏、千葉ロッテの攻撃で、先頭の荻野がショートへの内野安打で出塁。前出の試合同様、無死一塁の好機を作った。
次打者も同じマーティン。1点入ればサヨナラ勝ちになるこの場面でベンチからはすかさず犠打のサインが出た。
しかし、初球のストレートをマーティンがバントでファールにしてしまうと、3球目の真ん中高めのストレートもバントがキャッチャーへの小フライとなって凡退した。結果として走者を進塁させることができなかった。
続く鈴木大地の初球で、一塁走者の荻野が盗塁を試みたがこれも失敗。千葉ロッテはこの回、無得点に終わってサヨナラの好機を逸した。
つまり13日の試合では、マーティンに犠打のサインを出さなかったのではなく、出せなかった。いわば、消極的な選択ということになる。
北海道日本ハムベンチもそうした経緯を察知したのか、この場面では内野がチャージをかける素振りがまるで見られなかった。「バントはない。強攻でくる」。そう決めこんでいたように見えた。
イチローが話していたこと。
そこで再び「攻撃的2番とはなんだろう?」と考えてみた。
バントはしない、長打力がある、本来はクリーンナップを任せるようなチーム内最高の打者をあえて2番に置く。それが「攻撃的2番」だというなら、今後も同じようなことは起こるし、野球が大味化しないか懸念するところはある。
セイバーメトリクスが球界に浸透し始め、「フライボール革命」や「2番打者最強説」が唱えられる一方で、勝負所で走者を進める選択肢を選べない野球も並行して存在する。今年3月、イチロー氏が引退会見で「頭を使わなくてもできてしまうものになりつつある」と野球の行く末を案じていたのを思い出した。
前出の試合も、この試合も、結果として千葉ロッテは勝った。だからこの2つの試合、2つの場面は議論にすらなっていない。
断っておくが、これは「強攻策」をとった井口資仁監督の采配批判ではない。事実、22日の楽天戦ではマーティンを3番に起用している。試合を分ける勝負所で走者を送れない、そうした野球が今後の日本野球に是か非かというところにある。