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バスケW杯に富樫勇樹はいない。
司令塔の穴埋める「守備」への意識。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/08/20 20:00
8月12、14日に行われたニュージーランドとの強化試合では2戦とも先発PGとして出場した篠山竜青。“富樫不在”の穴を埋める活躍に期待がかかる。
簡単には埋められない富樫の穴。
そもそも、富樫の凄みとはどこにあるのだろうか。Bリーグで彼と対戦したチームの指揮官らのコメントが、それを雄弁に物語る。
「富樫選手にスペースを与えてしまい、11本の3Pを沈められた試合もありました。NBAのスティフィン・カリーしか、決められないような本数だと思います」
アルバルク東京のルカ・パビチェビッチHCは、そう言って富樫の得点力をたたえた。
あるいは、昨シーズンまで川崎ブレイブサンダースの指揮をとっていた北卓也氏も、そう話したことがある。
「うちとしては富樫選手からの速攻を警戒しているわけですが、彼は『このタイミングでは速攻はないのかな』と我々に思わせておきながら、繰り出してくることもあります。スピードだけではなくて、そのあたりの駆け引きもすごく上手い選手です」
そんな富樫の穴を簡単に埋められるはずがないし、誰かが彼と同じ役割を担えるわけでもない。
ただ、富樫がいないからこそ、チームに必要なことは何かを見つめなおし、襟を正すことならできるはずだ。
ファジーカス、渡邊、八村だけでは……。
昨年4月に帰化が認められたニック・ファジーカスに加えて、NBAプレーヤーとなった渡邊と八村の3人が、W杯予選を突破するための起爆剤になったことに異論の余地はない。彼らの存在があるから、日本がアジアだけではなく世界でも通用するようなチームになったかのような言説、空気も存在している。
自信は時に大きな武器になるから、一概に否定されるものではない。しかし、ニュージーランドとの2試合目で17点差をつけられて敗れたのも、そうした空気と無縁ではなかったはずだ。
だからこそ、ラマスHCは以前から警鐘を鳴らしてきた。
「彼ら3人が日本代表の一員として入るということは、良い結果が約束されるということではありません。例えば、W杯で対戦するトルコに関してはヨーロッパでもNBAでも活躍している選手が大勢いますし、これまでの功績があります。リスペクトをしないといけないチームだと思います。
期待感を持ってくれるのはうれしいですけど、私は(日本が一気に世界の強豪の仲間入りをしたというような)嘘はつきたくないので。(あくまでも)そういった強豪と戦う立場だということだけは理解してもらいたいなと思います」