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智弁和歌山の神懸りに勝る奥川恭伸。
本当にドラフト候補は不作なのか? 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byKyodo News

posted2019/08/20 07:00

智弁和歌山の神懸りに勝る奥川恭伸。本当にドラフト候補は不作なのか?<Number Web> photograph by Kyodo News

智弁和歌山の捕手・東妻純平らが明徳義塾戦で1イニング3ホームランを記録。奥川擁する星稜に敗れたが、伝統校として意地を見せた。

智弁和歌山の神懸りと奥川の力投。

 奥川の甲子園のピッチング内容は準決勝を前にして、<14回、165球、3安打、23三振、1四球、2死球、1失点>である。1イニングの平均球数は12球弱で、9回に換算すれば106球。これだけ球数が少ないのに23個もの三振を奪っているのが驚きである。

 前出の智弁和歌山戦の11回表、2番・細川に四球を与えたあと足がつってベンチに下がった。この時点で135球投げているので降板だと思った。球数を制限するべきか否か議論が沸騰している昨今の状況を考えれば、林和成監督には奥川を降板させる、いいきっかけになったと思ったが、ベンチから出てきた奥川は続投。

 そして12回にはストレートを3球投げて平均球速は151.3キロ、13回は6球投げて150キロ、14回は6球すべてストレートを投じ、平均球速は148.7キロだった。何度も言うが、こんなピッチャーは初めて見た。

 智弁和歌山の神懸りと星稜の先発、奥川恭伸のモンスター級の力投、これを見られただけで甲子園にやって来た価値があった。

即戦力のドラフト候補は少ないが……。

 インターネットには今年の甲子園大会を「ドラフト候補が少ない」という観点から酷評する記事が目立つが、練習時間の短縮もあって2年半の高校野球生活の中で完成度を高めていくのは難しくなっている。今後は70パーセントの完成度で大学や社会人、あるいはプロに送り込み、そこで完成度を高めていくというスタイルがこれからは当たり前になってくるだろう。

 そういう観点で選手を見れば3、4年後のドラフト候補は相変わらず多かった。

 ちょっと気が早いが、今大会の私なりの甲子園ベストナインは次のような顔ぶれになる(投手は5人選出)。

 投手
 奥川恭伸(星稜・3年)

 捕手
 藤田健斗(中京学院大中京・3年)

 一塁手
 平泉遼馬(関東一・3年)

 二塁手
 黒川史陽(智弁和歌山・3年)

 三塁手
 小深田大地(履正社・2年)

 遊撃手
 石井 巧(作新学院・3年)

 外野手
 井上広大(履正社・3年)
 桃谷惟吹(履正社・3年)
 来田涼斗(明石商・2年)

 投手
 池田陽佑(智弁和歌山・3年)
 飯塚脩人(習志野・3年)
 鈴木寛人(霞ヶ浦・3年)
 笠島尚樹(敦賀気比・2年)

 話を聞いたスカウトの中で、満点の評価は奥川だけで、私が高評価した鈴木(霞ヶ浦)も井上(履正社)も首を傾げるスカウトがいた。

 答えが出るのはまだまだ先、そういうことでいいのではないだろうか。

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