野ボール横丁BACK NUMBER
明石商・狭間善徳監督の“馬淵愛”。
喋りも熱さも飾らなさも瓜ふたつ。
posted2019/08/19 19:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
歯に衣着せぬ物言いと、膨大な野球知識に裏付けされた解説がおもしろく、明石商の監督、狭間善徳の囲み取材はいつも笑いが絶えない。
注目のスラッガー、1番・来田涼斗の話になったときのことだ。
「そんなたいしたバッターじゃないですよ。タイミングをはかれない男ですから。150キロのボールがホームに到達するのは、だいたい0.43秒なんです。バッターが始動してからボールを捉えるまでが0.2秒弱。つまり、0.23秒の間を感じられないとダメなんです。あいつはそれができない。緩急つけられたら、打てないですよ」
それにしても、似ている。狭間が師と慕う明徳義塾の監督、馬淵史郎に、だ。
狭間は20代後半から40代前半の一時期、明徳義塾中学・高校で野球の指導にあたっていたことがある。最初の5年間は中学の監督と高校のコーチを兼任し、その後は、中学の専任指導者となった。
「明徳に行ったばかりの頃は、まだ若造だったので自信だけはあった。でも、馬淵さんが持ってるもので、僕が知ってたのは10のうち4まで。あとの6は初めて聞くことばかりだった。こんなに野球とは奥深いものなんだと思いましたね」
ユニフォームまで明徳風に。
馬淵を敬愛してやまない狭間は、明石商のユニフォームも、明徳に似せた。白と紺を基調としたストライプのユニフォームは共通しているが「そっくりすぎてもなんなんで」と帽子のマークと、胸文字の縁取りの刺繍は、明徳と同じ銀ではなく金にした。
馬淵と似ているのは、取材時の「名演説ぶり」だけではない。
ピンチを切り抜けたときやスクイズが決まった時、昂ぶる気持ちを抑え切れずベンチから飛び出し、雄叫びを上げながら思わずガッツポーズが出てしまう血の熱さ。データを重視し、時間さえあれば、相手チームの分析に時間を費やす異様なまでの研究熱心さ。ボタンタイプの服があまり好きでなく、ファスナータイプのグラウンドコートを愛用する面倒くさがりなところ。
そして、人生のほぼすべてを野球に捧げているところも、だ。