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ドイツのカップ戦は1回戦から熱狂。
5部クラブの夢と大迫勇也の洗礼。
posted2019/08/20 19:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
湿度が低く、爽やかな風が吹くドイツ・フランクフルトの盛夏は穏やかな天候が続いています。
市民たちがカフェやレストランの外に設置されたオープンスペースで食事やお酒などを嗜みながら歓談に耽っています。
この時期、フランクフルトでは市内の各所で様々な屋外イベントが開催されます。最も有名なのは、フランクフルトの地酒として有名なアップルワインの屋台が立ち並ぶ『Apfelwein Festival』。このアップルワイン、地元の方々が「美味いから飲んでみろ」と必ず勧めてくれるのですが、そのお味はなんだか気の抜けたアップルサイダーみたい……。
でも本人を前に「うん。不味いです」とは言えないので、いつも曖昧な笑顔を浮かべてやり過ごすようにしています。人それぞれ、いろいろ好みがありますからね。
8月の上旬にはフランクフルト市内を横断するように流れるマイン川沿いのある広場で『Main Matsuri』というイベントが開催されました。
「Main」(英語でメインの意)は、フランクフルトの正式名称である「フランクフルト・アム・マイン」のマイン川にかけていて、「Matsuri」は文字通り日本語の『祭り』のこと。
イベントは昨年に続き2回目の開催だそうで、広場にはイベント用の大型ステージセットが設けられ、その周囲に日本食などのブース、和食器、着物などの和服やヨーロッパでも人気の日本のアニメや漫画のグッズを売るお店が並び、いわゆる『ジャパン・フェスタ』として活況を呈していました。
日本が誇る至高のビール『キリン一番搾り』を飲み、おにぎりや鶏の唐揚げを食べつつ日本からやってきたミュージシャンやダンスグループのパフォーマンスに心を躍らせる。フランクフルトでこんな贅沢な日本気分を味わえるなんて、本当に有り難いものです。
ドイツの地で『津軽じょんがら節』。
僕が出掛けた日は青い空と白い雲のコントラストが映える好天で、麗らかな陽気に気分が良くなり、ビールを片手にぼんやりとステージセットへ視線を向けていました。すると、綺麗な着物を着た若い女性ふたりが三味線を抱えて舞台へ。
彼女たちはどうやら姉妹で、挨拶の英語やドイツ語はぎこちなく、声質も少しアニメの声優っぽい感じ。三味線のペグ(三味線では糸巻きというそうです)がカラフルなピンク色に代えられていたので、少しライトな音楽を想像して音に耳を澄ませたのですが、演奏が始まってビックリ!
彼女たちが弾いたのは、津軽民謡の名曲『津軽じょんがら節』。左手で弦を押さえる繊細な指使いと右手の撥(ばち)で弦を叩きつける力強いストロークのアシンメトリー感に圧倒された僕は、体に電流が走ったかのような衝撃で、その場から動けなくなりました。
三味線って、とてもエモーショナルな音色を奏でる楽器なんですね。僕は青森県に行ったことがありませんが、きっと素朴で静謐なはずの津軽の美しい原風景が確かに見えました。彼女たちの演奏は本当に素晴らしかった。