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ドイツのカップ戦は1回戦から熱狂。
5部クラブの夢と大迫勇也の洗礼。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/08/20 19:00
大迫勇也擁するブレーメンが戦ったポカール1回戦、“いつもの”本拠地は、デルメンホルストサポーターの熱狂に包まれた。
5部クラブにとって世紀の一戦が。
DFBポカールではトップカテゴリーのクラブが苦戦するケースが度々あります。これは同じく国内カップ戦である日本の天皇杯と似たような傾向で、事前情報の少なさ、互いのモチベーションの差異などの様々な要素が作用して、いわゆる“ジャイアントキリング”が起こるのです。
今季も1回戦で1部のアウクスブルクがレギオナルリーガ(4部に相当)のSCフェールに、そしてマインツがブンデスリーガ3部のカイザースラウテルンに敗戦。2回戦以降も意外な番狂わせが起こるかもしれません。
そんななか、今季DFBポカール1回戦で、世紀の一戦と銘打たれて注目されたゲームがありました。それは大迫勇也が所属するベルダー・ブレーメンと、ニーダーザクセン州に属するアトラス・デルメンホルストというクラブとの一戦です。
デルメンホルスト。僕は、この街の名前もクラブのこともまったく知りませんでした。デルメンホルストが現在所属するカテゴリーはオーバーリーガ(5部に相当)。ドイツでは1部から3部までがプロクラブとして認知されているため、デルメンホルストは完全なるアマチュアクラブです。
そんな彼らは昨季のニーダーザクセン・カップで優勝を遂げて、見事DFBポカールの出場権を獲得。その対戦相手が本拠地・デルメンホルスト市の近隣にあるブレーメンとなったことで、一気に注目度が高まりました。
「どこでゲームを開催するの?」
デルメンホルストからブレーメンまではドイツ鉄道在来線で約15分。マッチメイクが決まってからは特にデルメンホルスト市内が大騒ぎになったようで、すぐ問題になったのが「どこでゲームを開催するか?」でした。
本来ならDFBの規定でデルメンホルストのホームスタジアムである、シュタディオン・アン・デア・デュスターノルトシュトラッセ(長い……)で試合が行われるはずですが、このスタジアムは陸上競技場であるうえに収容人数が1万2000人しかなく、観戦希望者の要望に適切に応えられないのは必至でした。
そこでデルメンホルストのクラブ会長であるマンフレッド・エンゲルバート氏がDFBに対して、この試合だけ例外的にブレーメンのホームであるべーザー・シュタディオンで開催できないか掛け合ったのです。