甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で欠かせぬ定番ブラバン曲、
『アフリカン・シンフォニー』秘話。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2019/08/11 08:00
アフリカン・シンフォニーを演奏する智弁和歌山。この曲がテレビから聞こえると、お盆だなあと思う人も多いのでは。
「智弁和歌山のあの曲をやって!」
迫力あふれるサウンドや鳴りの良さなどから、吹奏楽界でも瞬く間に人気となったこの曲は、多くの学校が演奏曲のレパートリーとして楽譜を保有した。名門PL学園吹奏楽部OBによると、「1978年から甲子園で演奏したが、オリジナル曲を重視するようになったことから、次第に使わなくなっていった」という。
高校野球ファンの間では、「アフリカンといえば智弁和歌山」とよくいわれるが、同校は1987年から同曲を応援に使用。甲子園で活躍し、繰り返しテレビ中継で映像と応援の音が流れるにつれ、同曲は全国に広まっていく。野球部員が「智弁和歌山のあの曲をやってほしい」と、吹奏楽部にリクエストするのだ。
今でこそ曲名が知られるようになったが、当時はまだインターネットのない時代。聴いたことはあっても曲名がわからない野球部員も多かったのであろう、この曲のことを「智弁」と呼び、現在も伝統的にこのように呼ぶ学校は少なくない。
「相手に威圧感を与えるような曲を」
智弁和歌山高校吹奏楽部初代顧問の吉本英治氏は、この曲を応援に取り入れた理由をこう話す。
「地方大会から全校応援をする本校としては、生徒達の大きな声を生かせるような壮大な雰囲気があり、相手に威圧感を与えるような曲はないかと探していたところ、以前自分達も演奏したことのある『アフリカン・シンフォニー』にたどり着きました」
甲子園の時期になると、やたらとテレビ中継で『アフリカン・シンフォニー』が流れてきて不思議に思っている吹奏楽愛好家も多いのではないかと思うが、吹奏楽界のあの名曲は、このようにして高校野球界に広まっていったのだ。