甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で欠かせぬ定番ブラバン曲、
『アフリカン・シンフォニー』秘話。
posted2019/08/11 08:00
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
連日熱戦が繰り広げられている、101回目の夏。
吹奏楽部によるブラバン応援も注目されるなか、毎日のようにアルプススタンドから聴こえてくる『アフリカン・シンフォニー』は、外せない曲のひとつ。テレビ番組などの高校野球応援曲ランキングでも、常に上位にランクインする定番人気曲だ。
高校野球の応援で耳にする機会の多い同曲だが、もともとは、ディスコブームの起点となった『The Hustle』のヒットで知られるヴァン・マッコイの楽曲で、1974年にリリースされたアルバム『Love is the Answer』に収録されていたものだ。
そもそも、なぜこの曲が野球応援曲としてこんなにも愛されるようになったのだろうか。吹奏楽部出身者として、幼い頃からこの曲に親しんできた筆者なりの視点でこの謎を紐解いていきたい。
吹奏楽ポップスのパイオニアだった。
日本の吹奏楽界で、まだ洋楽を演奏する機会がほとんどなかった昭和50年代。『Love is the Answer』のリリースから3年後の1977年に、吹奏楽版の楽譜が「ニューサウンズ・イン・ブラス」(以下、NSB)シリーズ(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)から発売された。
NSBとは、日本の吹奏楽界のポップスジャンルにおけるパイオニア的存在として、多くの吹奏楽愛好家が演奏経験のある人気楽譜シリーズだ。
編曲を担当したのは、「吹奏楽ポップスの父」として愛されてきた、作曲・編曲家の、故・岩井直溥氏。NSBシリーズでも多くの編曲を手がけ、『アフリカン・シンフォニー』の楽譜化を提案したのも岩井氏だったという。
吹奏楽版の楽譜が発売されるやいなや、吹奏楽界でも大ヒット。筆者が吹奏楽の演奏会でこの曲を初めて聴いたのは、1985年頃。子ども心に「かっこいい曲だなあ」と衝撃を受けたことをよく覚えている。