“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
炎天下の連戦が続く日程に危惧の声。
見直すべきインハイサッカーの運営。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/08/10 09:00
猛暑のなか、沖縄で行われたインターハイサッカー競技。大会側も対策を講じたが、レギュレーションについての議論は重ねていく必要があるだろう。
進路に重要な意義を持つインターハイ。
「インターハイをなくせという議論が起こっていますが、現場の意見からすると、議論は起こって当然だと思いますし、この環境下での連戦ははっきり言ってやめたほうがいい。ですが、インターハイという大会自体をなくせという議論になると……簡単ではないし、インターハイはインターハイで意義があるものだと思います」
こう語るのは今大会でベスト8に進出した徳島市立高の河野博幸監督だ。
「3年生で進路が決まっていない選手からすると、このインターハイが最後のアピールの場。2年生の選手からすると、ここでベスト8以上を決めたり、活躍をすれば、早い段階で進路も拓けてくるんです。大学の推薦は選手権までいくと、3年生は加味されないですから、自分が望む進路を勝ち取るためにも、インターハイというのは重要なんです」
河野監督が話すように、冬に行われる高校選手権では、ほとんどの3年生がその時点で就職なのか、大学進学なのか、プロなのか、進路が決まっている。しかも、大学への指定校推薦についても考えると、「全国大会でベスト8以上の成績」というのは大きなアドバンテージになる。しかもインターハイは選手権やリーグ戦と違って、すべてのスポーツ競技における共通基準になるため、どの大学も「要件」に入れやすいのだ。
地方高校にとってのメリット。
今大会、12年ぶりのインターハイ出場、選手権を含めた全国大会への出場が9年ぶりとなった北越高にとっても、十分にメリットを感じられる大会だった。
北越高はプリンスリーグ北信越に所属し、アルビレックス新潟U-18や星稜、富山第一、帝京長岡といった全国レベルのチームとしのぎを削っているが、全国大会から遠ざかったことで、北信越以外のチームと戦える機会がほとんどなかった。
今大会で1回戦から勝ち上がると、3回戦では青森山田をPK戦の末に撃破。準々決勝で京都橘に敗れたが、大きく注目を浴びる存在となった。
チームを率いる30歳の青年監督・荒瀬陽介はこう振り返る。
「ウチとしては12年ぶりにインターハイに出させてもらって、選手たちにとっては初の全国の大舞台だったんです。こうして新潟、北信越から出て、普段対戦することがないチームと対戦させてもらうこと自体が大きな経験になりますし、インターハイはリーグ戦と比べて注目度が違うんです。Jリーグ関係者、大学関係者、そして報道陣の注目度も違って、試合後に取材されたり、関係者と話す機会がリーグ戦と比べて異なりました。
そういう『見られている場』で、普段戦えないチームと戦える機会は、たとえ1試合であっても選手たちに素晴らしい影響を与えてくれると感じました。特に3回戦ではプレミアEAST首位の青森山田とやらせてもらって、手負いの状況だったと思いますが、勝つことができたことは、選手たちにとって相当なプラスになったと思います。弱いチームこそ、こういう場所で戦わせてもらう経験は物凄くプラスになると思います」