マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園の1日を記者はどう過ごすか。
試合、練習、囲み……常に取捨選択。
posted2019/08/08 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
今年の夏も「甲子園」にやって来た。
甲子園のネット裏のちょうど中段あたり……「第2記者席」と書かれたシートのかかった席がおよそ40席。その中の一席に位置して、今年も球児たちの熱闘をこの目で取材できる幸せ。
つくづく、幸せだなあと思わず口に出して感動してしまうのは、春のセンバツと夏の「甲子園」、毎年変わらない。
この記者席に腰を下ろして、なんにも感じなくなったら、その時が“引退”の時だろう。
第2記者席で仕事をしているのは、その多くが雑誌の記者さんたちだ。
新聞、放送局の記者さんや関係者の方たちは、私たちの第2記者席より一段高い場所にある「記者席」で、ちゃんとしたボックスが定位置として常設されている。
記者の1日は試合の2時間前に始まる。
第2記者席には、雑誌の記者のほかにも、各地からやって来ている地方のライターさんたちも多く、やはり郷土愛というのか地元熱というのか、ご当地チーム奮闘の場面になると、思わずガッツポーズで立ち上がり、記者席から声援を送る。そんな場面にも遭遇する。
そこまでアクティブではなくても、勝利が決した瞬間、弾かれたように記者席を蹴って、下の通路のインタビューに駆けつける姿など見ると、やはり「郷土の1勝」というのは格別なものなのだろうな……と、実感が伝わってくることもあったりするのだ。
記者の1日は早朝に始まる。
第1試合が8時開始の時は、「試合前取材」があるので、その試合前取材に間に合うように、記者は甲子園にやって来る。
私はそこまで「根性」がないので、せいぜいシートノックの始まる7時20分あたりか。毎日、一番電車に近い時間に球場に駆けつける記者の方たちには、まったく頭が下がるばかりだ。