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聖光学院が戦後最長13年連続甲子園。
「弱いチームが弱さを認めて勝った」 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2019/08/01 11:40

聖光学院が戦後最長13年連続甲子園。「弱いチームが弱さを認めて勝った」<Number Web> photograph by Genki Taguchi

13年連続甲子園出場を決め、宙を舞った聖光学院・斎藤監督。

「連覇」という十字架を背負う。

 聖光学院は「連覇」という十字架を背負っている。その重みは1年、また1年と増していく。13年。聖光学院に圧し掛かる負荷は、他者には到底、理解できるものではない。斎藤は春の敗戦から6月にかけて、「鬱になりかけていた」と漏らした。

 遡れば一度だけ、斎藤は心身ともに疲弊して夏を迎えた年があった。それは06年。連覇が始まる前年である。この年も「負けるわけがない」と、自己中心的な選手の集まりだった。春の大会でも惨敗。斎藤が、それこそ体当たりで自暴自棄になりかけたチームを立て直そうとしたが顕著な改善が見られず、精神的にも参ってしまい、「即入院レベル」と診断されるほど体も弱っていた。

自己中心的な性質を生み出した。

 それでも今年、斎藤は「あの年よりもきつかった」と言った。

「今は大きいものを背負いすぎているかんね。簡単に負けらんねぇ。いいチームに仕上げていく過程で、『どこまで成長できるか?』と確信を得るまで生徒らと向き合っていくとなると気が気じゃないんだ。惨敗する。『壁を乗り越えられねぇんじゃねぇか?』って思えば思うほど、きつかった」

 斎藤が自問自答をしているさなか、自信過剰のチームは練習を行わず、選手間ミーティングで想いをぶつけ合っていた。

「破」

 これは、今年の代が最初に掲げたテーマだった。「自分の素を出すくらい殻を破れ」。そんな意味を込めていたが、その「素」は、結果的に「自分さえ活躍できればいい」「レギュラー、あるいはベンチ入りできればいい」といった、自己中心的な性質を生み出し、遂には「俺らは力がある」のような、根拠のない自信を主力選手に蔓延させてしまった。

【次ページ】 控え選手から辛辣な言葉が飛ぶ。

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