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聖光学院が戦後最長13年連続甲子園。
「弱いチームが弱さを認めて勝った」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2019/08/01 11:40
13年連続甲子園出場を決め、宙を舞った聖光学院・斎藤監督。
負けるべくして負けた。
チームが自信過剰だった5月。春季大会に「いつもの聖光学院」はいなかった。
県大会出場を決める県北支部予選決勝で福島商に敗戦。県大会でも2回戦で、東日本国際大附昌平に2-6であっさりと敗れた。春季東北大会の出場権を逃したのは、実に11年ぶり。結果だけを見れば十分すぎる屈辱だ。
負けるべくして負けた――。敗戦後の斎藤は落ち着いていた。
「負けてよかったんじゃないかな。今のチーム状態を表した試合だったよね。自惚れというか、のぼせ上ったツケが回ってきたというかね。『負けが続いているのは偶然じゃない』『弱いから負けたんだよ』ってことに気づかないと、夏は足を掬われる」
この一種の凋落を外野が煽る。
「一度ならず二度も負けるとは」
「今年は聖光、危ないな」
王国崩壊の予兆にメディアも追随する。
「夏は群雄割拠の様相」
「聖光、黄色信号」
ライバル校に百戦錬磨の指導者が就任。
これは、春の敗戦だけが理由ではなかった。
昨年、日大東北を6度の甲子園に導いた宗像忠典が監督に復帰し、11月からは仙台育英前監督の佐々木順一朗が学法石川の指揮官となり、「打倒聖光」を掲げていた。聖光学院が目下、夏の連覇を続けているとはいえ、県内のライバル校に百戦錬磨の指導者が就任したとなれば、周囲がざわつくのも無理はない。
そんなことは、斎藤だって百も承知である。表向きには「いい刺激をもらえたと思って戦います」と言ってはいたが、胸の内はそこまで冷静ではない。むしろ、「向かってこい!」と言わんばかりに強気を貫いていた。
「今年は壁になんねぇといけねぇって思ってる。学石、日大の監督が代わった。『だから聖光は負けた』なんて周りから言われたら、俺たちスタッフだって面白くねぇじゃん」