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マンCに真っ向勝負を挑んだ90分。
マリノスに降り注いだ拍手の正体。
posted2019/07/31 11:15
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Getty Images
タイムアップの瞬間、日産スタジアムは6万5000人の大拍手に包まれた。この拍手を言葉にすると、「好ゲームをありがとう」になる。
練習試合の90分が密度の濃い時間になったのは、横浜F・マリノスが素直に力を出し切ろうとしたからだ。
マンチェスター・シティは最終ラインを大胆に押し上げ、敵を一気に押しつぶそうとする。対戦相手の多くは自陣を固めて嵐をやりすごそうとするが、横浜は違った。腹をくくってラインを押し上げ、中盤勝負に打って出た。
横浜はJリーグの中でも、ポゼッション重視の攻撃的な試合運びを志向するが、この試合でもスタイルを曲げず、そのことが好ゲームを生んだ。
互いの最終ラインが30メートルほどの間隔で対峙し、その中にフィールドプレイヤー20人がひしめく。こうなると一本のパス、もしくはひとつのミスが決定機につながる。Jリーグなら決定機が決まらないことも多いが、相手はプレミアリーグ王者。ピンチが即、致命傷となる。
J屈指の快速CBも「かなり疲れた」
こうなると、片時も目が離せない。練習試合にもかかわらず、久々に「サッカー見てるなあ」という充実感があった。横浜やシティのファンはもちろん、サッカーにあまり興味がない人でも、面白いと思える90分だったと思う。
見る側が目が離せなければ、プレーしている選手たちは当然、一瞬も気が抜けない。
試合後、横浜のブラジル人CBチアゴ・マルチンスが「頭が疲れた」と語っていた。
「ラインを大きく押し上げているから、裏を突かれて全力で戻らなきゃいけない場面が何度もあって、フィジカル的にかなり疲れた。でも最初から最後まですべての瞬間、なにが起きるかわからないから、緊張感もあって、頭もかなり疲れたね」
表情には充実感が浮かんでいたが、それは密度の濃い時間を過ごした実感があるからだろう。