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マンCに真っ向勝負を挑んだ90分。
マリノスに降り注いだ拍手の正体。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byGetty Images
posted2019/07/31 11:15
マンチェスター・シティ相手にもスタイルを変えなかった横浜F・マリノス。1-3で敗れたが、緊張感のある好ゲームを演じた。
才能豊かな選手たちの綱渡り。
このゲームを見て、改めて考えたことがある。
Jリーグには正直、目を離せないゲームは少ない。それはひとつのミスが致命傷になるほどの、緊張感がないからだ。
横浜が自陣からパスをまわすと、シティはラインを大きく押し上げて前線からプレッシャーをかける。自陣にいるのはキーパーひとりという場面も何度かあった。
これはフィールドプレイヤーがひとりでも走らなかったり、ポジショニングを間違えたりすれば、キーパーが大ピンチにさらされることを意味する。豊かな才能を持つプレイヤーたちが綱渡りをする。これがシティの強さなのだろう。
もちろんJリーグのすべてのチームが、シティのようにラインを大胆に押し上げる必要はない。それは至難の業だ。
だがリスクを負って、ミスが致命傷になる厳しい勝負をすれば、ゲームはスリリングになり、選手は鍛えられる。この一戦が与えてくれた教訓だろう。
派手なこと、無理なことをしない。
もうひとつ。
この一戦で、シティが教えてくれたことがある。それはシンプルにプレーすることの大切さだ。
互いが最終ラインを押し上げたことで中盤は過密になり、一人ひとりに許されたスペースと時間はわずかなものになった。こういう条件下では、手数をかけずにシンプルにプレーすることが重要になる。才能に恵まれたシティの面々も、派手なこと、無理なことをせず、シンプルなプレーに徹していた。
シンプルなプレーには、日本では批判の対象になりやすい横パスやバックパスも含まれる。
過密状態の中盤では、敵のプレッシャーから自由になることは難しく、前にボールを運ぶと、すぐにマークがきつくなる。そういうとき、シティの選手たちは無理をして敵を抜こうとはせず、シンプルにボールを下げる。