プロ野球PRESSBACK NUMBER
西武・十亀剣プロ8年目で50勝到達。
“力まない投法”で生まれた安定感。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2019/07/25 07:00
ファンとハイタッチする西武・十亀剣。ドラフト1位で2012年に入団、先発投手陣のなかでは内海、榎田に続く年長者となる。
好成績につながる「力まない投法」。
不安が残るとはいえ、「先発として最もやってはいけないのは試合を壊すこと」と腹をくくった十亀はピッチングのスタイルに着目した。
「調子が悪いのはわかっていたので、ダメモトで軽く投げてみたんです。でも、その代わり、丁寧にコーナーをついて投げようと思いました。その結果、最初の先発で7回3失点、なんとか試合を作ることができて、自分でも感覚がよかったんです」
昨シーズン、常時146~147kmを表示していた速球が、「軽く投げた」という最初の試合でもそん色ないスピードを記録した。ファウルの打たれ方も、昨年の感覚と一緒で自分のボールに球威を感じた。なおかつ、翌日の疲労具合は昨シーズンと比べ物にならないくらい軽かった。「全力で投げないメリットだと思います」と十亀は分析した。
「こういうピッチングでもいいのかもしれない、と現在も続けているところです」
力まない投法が4勝という数字につながっている。
いいバッターにこそ、インコースを。
同時に、荒れ球が多かったという弱点も、力まないことによって改善した。
「インコースをつけていることも大きいと思います。バッターがインコースのボールをよける場面は何度かあるんですが、でもキャッチャーの動作を見ると、キャッチャーはそれほど動いていない。キャッチャーの意図と差がない、ちょうどいいところに投げられている証拠だと思っています。打者にそのボールの残像があるので、インコースを利用できているのかなって思いますね。それは森や岡田(雅利)がうまくリードしてくれているおかげでもあります」
特に今シーズンのライオンズ投手陣では、相手のインコースを攻めることを課題に挙げる投手が多い。十亀も同様だ。
「昨年までは、インコースのサインが出たときに力んで放っていたんだと思います。力むことで、シュート回転して中に入る。もしくは指にひっかけて真ん中に入るってことが多かった。ずっとそれを課題としてきました。ただ、今年は追い込んでからも力を抜いて、丁寧に投げることが実行できていると思います」
インコースのコントロールの必要性について、十亀はこう考えている。
「今はバッターの力がついてきているので、外に真っすぐのいいボールを放っても、簡単に打たれるケースが多いんです。うちの中村(剛也)さんとかは、外の力のあるボールだってスタンドに放り込む。そういう時代だからこそ、バッターに自分のスイングをさせないためにも、インコースへのボールは絶対に必要です。特にいいバッターこそ、インコースを攻めないと打たれるという思いはありますね」