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西武・金子侑司らが築く「盗塁王国」。
コーチと共に追い求める理想の走り。
posted2019/07/24 11:30
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
プロ野球は、2019年シーズン後半戦が始まっています。
その中で年間50盗塁が見えるペースで盗塁数を伸ばしているのが、埼玉西武ライオンズの金子侑司選手です。
2016年、53盗塁をマークして盗塁王を獲得した金子選手が、「盗塁」に関してこんな話をしてくれました。
「盗塁には“勇気”がいるんです。その勇気を与えてくれる状況を作ってくれるのが、今のライオンズです。以前、友亮さんが『すべての責任は俺が取る』とチームに言ってくれたんです。『だから失敗したときのことはまったく考えなくていい』と。あれからチームが変わりました」
金子選手の言う「友亮さん」とは、ライオンズの佐藤友亮・外野守備走塁コーチのこと。現在は、一塁ベースコーチとしてライオンズの走塁戦略を一手に担う存在です。
“走るライオンズ”に変えた盗塁への意識。
「試合前に、友亮さんとみんなで意見をぶつけ合うんです。今日の先発投手のクセ、スタートを切るタイミング、牽制の傾向など、自分が調べてきたことと友亮さんの持っているデータを擦り合わせています。『全然ダメ』『違う』『合ってない』と一蹴されることもよくあります。源田(壮亮)も僕も、おそらく外崎(修汰)や秋山(翔吾)さんも盗塁への意識、意欲はガラッと変わりました。それが今、“走るライオンズ”がある理由かもしれません」
金子選手曰く、佐藤コーチと選手たちの意見交換は試合前に留まらないそうです。
「試合前だけではなく、時にはゲーム中も、または塁上でも意見をぶつけることがあります。たとえば……『友亮さん、この投手は右膝の動きです。さっきランナーに出た時に気づきました。右膝が動いた瞬間、行ってもいいですか?』と。友亮さんと意見を交わし、納得してくれたら、スタートを切ります」
埼玉西武ライオンズのチーム盗塁数は、'16年が97個でリーグ4位。佐藤コーチの盗塁イズムが浸透した就任2年目の'17年は129個、'18年は132個と他5球団を大きく上回りリーグトップを記録するようになりました。そして今季も、リーグナンバーワンの97盗塁(以下、データすべて7月22日現在)をマークしています。個人でも金子(1位・30個)、源田(2位・22個)、外崎(5位タイ・16個)と盗塁ランキングの上位にライオンズ勢が名を連ねています。