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ドルトムント戦の0-6から4年後、
川崎がチェルシーに粘り勝てた理由。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/22 11:30
川崎らしいパスワークはなかなか繰り出せなかった。その中でチェルシーに勝利したのは、J王者としての成長の1つなのだろう。
家長も舌を巻く上手さだったが。
小林に連動していたトップ下の家長も同じ感想を抱いている。
昨年度のJリーグMVPは「いやぁ、上手かったです、はい」と微笑みを浮かべ、自分たちのプレッシングを無力化する巧みさに脱帽した様子だった。
「特にボランチやセンターバックのところで、ボールを持たれていた。ボランチの2人が、サポートがなくてもボールを運べる。センターバックと連動して球の動かし方も落ち着いていた。シンプルに上手かったです」(家長)
前線からのプレッシャーが機能せず押し込まれる前半だったが、中盤と後方の選手たちが耐え続ける。新鋭ボランチ・田中碧が中盤で果敢に相手に食らいつき、谷口彰悟とジェジエウを中心とした最終ラインが集中力を切らさなかった。
連続失点を喫した4年前とは違い、ボールを保持できずとも我慢の試合運びができるのが現在の強みだ。力の差を感じる相手に対しても白旗をあげるのではなく、ペースを握られながらも粘り強く戦い続けた。
新井が守り、脇坂と憲剛がひと仕事。
ハーフタイムで、両チームともに5人のメンバー交代。時間とともにテストマッチの色が強くなってきたが、川崎は後半もチームとしてのクオリティを落とさなかった。
その象徴が、後半途中にチョン・ソンリョンに代わってゴールマウスを守った新井章太のパフォーマンスかもしれない。70分、抜け出したケネディとの1対1を冷静にセーブすると、74分にはジルーのFKを俊敏な反応でかき出し、得点を許さなかった。
彼もまた、4年前の苦い記憶からの成長を示そうとしていたのである。
「前回のドルトムント戦は攻撃で何もできず、守備でもやられた。そういう反省をしてきたからこそですね。守備をしっかりしないと攻撃には繋がらない。それ(自身のセーブ)はメッセージになったかなと思う」(新井)
こうした守備陣の奮闘に前線が応える。
試合終盤の87分に生まれた決勝弾は、若きクラッキとバンディエラの機転から生まれたものだ。連続していたCKで、直前とは違う変化を施そうとしたキッカーの脇坂泰斗の狙いを、中村憲剛が素早く察知した。
「最初は、逆側のコーナーでケンゴさんに出そうとしたんですが、相手が来ていたのでやめました。ただ、次にパッと見たらケンゴさんが寄ってきた。その時間で“中が動けば良いな”と思って。そこで僕はニアに蹴ったけど、引っかかった。ただケンゴさんが走ってくれていた」(脇坂)