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国立大Jリーガーから海外転戦人生。
廣山望が世代別代表で伝えること。 

text by

谷川良介

谷川良介Ryosuke Tanikawa

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photograph byTakashi Shimizu

posted2019/07/13 11:30

国立大Jリーガーから海外転戦人生。廣山望が世代別代表で伝えること。<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

南米をはじめとした海外生活の経験が豊富な廣山望。そのキャリアで得たことを若き代表選手たちにも伝えていく。

海外の文化に触れて得るものは多い。

 若月らU-17代表は、6月の南米遠征でアルゼンチンの選手との試合も経験した。

「(アルゼンチン戦は)勝ちはしたけど、1人ひとりはとんでもなくうまかった。常に首を振ってワンタッチで捌くし、対人プレーも強い。チリでは裸足でサッカーをする子供たちを目の当たりにしました。廣山コーチがミーティングで話していたことが自分の目の前で起こっていて……。こういう経験ができるのは限られた人だけだと強く思いました。無駄にしたくないです」

 厳しい状況でも武器があればどんな世界でも戦える。貪欲に学ぶ姿勢があれば新たな気づきを得ることができる。世代のトップにいる選手に廣山はそんなことを伝えているのだろう。

「海外の文化に触れたり、厳しい競争を味わうこと、サッカーをおもしろいと思うことは、きっと今の彼らにとって大きなエネルギーになると思うんです。僕自身もそうだった。なんとなく身近にあったサッカーをただしているだけではなく、本気でやる価値に気づいてほしいなとは思います」(廣山)

 U-17日本代表は10月にW杯を、U-15日本代表は世界への切符を懸けた戦いに挑む。かつて廣山も'97年ワールドユースに出場した経験者だ。

「確実に自信になる。悔しい思いも、勝てるという気づきも、大会に出ないことには感じられない。指導者としても現在地を測る上で重要な場だと思っています」

「えっ、CM出ていたんですか?」

 若月にもその思いは伝わっていた。

「U-20W杯も見ていました。まずは選ばれるように。そして(ベスト16の)壁を超えたい。そうすれば見える世界は変わると思うので」(若月)

 廣山が紡ぐ言葉は滑らかで、知的だ。だが時に大胆で、煮えたぎる情熱と“極端”な世界で培ってきた太い芯が見える。世界を見てきた廣山だからこそ、厳しさもわかれば、同時に可能性も感じている。

 最後に若月にこんな質問を投げてみた。

「廣山コーチってテレビCMに出ていたんだよ?」

「え、CMですか? 本当ですか。まったく知らなかったです」

 無理もない。若月は、廣山が南米でサッカーの本質を覗いていた2002年に生まれたのだ。日本サッカーの今後を担う彼らにとって、廣山は打ってつけの「教材」なのだと思う。

 少しばかりではなく、大きな縁を感じた。

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廣山望

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