サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
国立大Jリーガーから海外転戦人生。
廣山望が世代別代表で伝えること。
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byTakashi Shimizu
posted2019/07/13 11:30
南米をはじめとした海外生活の経験が豊富な廣山望。そのキャリアで得たことを若き代表選手たちにも伝えていく。
日本と世界の「パイ」の違い。
選手として、指導者として、さまざまな視点でサッカーに触れてきた廣山は「あくまでも一般論になるが」と前置きした上で、海外と日本の差をこう明示してくれた。
「貪欲さや厳しさのある環境の中から出てくる選手の“パイ”の大きさが違う。ルーツ、国籍、人種、宗教、さまざまな背景の中でサッカーをして、競い、ときに喧嘩もする。育成年代の選手たちでさえも、それを経験している子供たちが団結して大会に挑んできます。日本はサッカーでダメだったからといって街で寝るような生活になることはありえないですよね。
逆にいえば、よくこの世界で日本がここまで実績を積んでいるとも言えます。日本サッカーは着実に成長している。U-17、15で見ている選手は精神的にもとてもタフだし、フィジカル的なものは僕らの時代に比べて格段に上がってきています」
廣山が言うように、Jユースや高体連の選手が経験を積む場所も着実に増えており、現にここ数年U-20W杯やU-17W杯など世界の舞台でそれ相応の結果を残してきた。U-15日本代表では街クラブからの選出も目立つなど、選ぶ側の“目”も洗練されてきた。
指導を受けている選手に聞くと。
では、彼自身は代表活動を通して選手たちにどんなことを求め、伝えているのだろうか。
「コーチという立場ですから、(代表では)まずは森山監督のサポートという仕事が一番。その上で必要性があればプレーについて、または自分の経験を選手に話すことはあります。
ただ、代表にいる子たちは自分たちの力で(代表としての)プレーする機会を得ている子なわけです。僕が何も言わなくても戦う準備ができている子が多い。アプローチの仕方はそれぞれで、一概に僕の価値観を押し付けたりはしない」
先入観を与えすぎず、必要なときにだけ声をかける指導は、自分の経験でしか得られないものの大きさを知る廣山らしい所作だろう。
実際に廣山から指導を受けている選手たちは、どのように感じているのか。U-17日本代表のFW若月大和に聞いてみた。桐生第一高の3年生のFWはすでに湘南ベルマーレ加入が内定し、5月26日ヴィッセル神戸戦でJリーグデビューを飾っている有望株はこのように話した。
「廣山コーチは明るくて、おもしろい。たまに廣山コーチをいじることもあります(笑)。ただ、サッカーのことを質問すると必ず倍以上に返してくれる。僕らが真剣にサッカーと向き合える環境を与えてくれています。恐れずに長所をどんどん伸ばせと言ってもらえるし、僕はFWなので相手が嫌がることを繰り返せと言われることが多いです」