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パ防御率1位・山本由伸は「万能」。
快投を支える気づきと勝利への欲求。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2019/07/12 07:00

パ防御率1位・山本由伸は「万能」。快投を支える気づきと勝利への欲求。<Number Web> photograph by Kyodo News

前半戦を終わった時点でパ・リーグ防御率1位となったオリックス山本由伸。ファンからの期待も膨らむばかりだ。

若きエースに響くベテラン比嘉の言葉。

 一方で、「自分に勝ちがつくかどうかは、一番最後の、おまけ」だと言う。

 今年の前半戦、山本はとことん打線の援護に恵まれなかった。防御率1点台で、13試合のうち9試合で自責点2以下に抑えたにも関わらず、4勝4敗にとどまっている。

 それでも不満はおくびにも出さず、自身がマウンドを降りた後は、ベンチで身を乗り出して試合を見つめる。自分に勝ちがつかなくても、チームに得点が入れば無邪気に、全身で喜びを表現する。

 山本が胸に刻んでいるのは、先輩である比嘉幹貴の「いい時こそ謙虚に、悪い時こそ明るく」という言葉だ。昨年、山本がリリーフをしていた時にかけられた言葉だという。

「確か由伸がちょっと暗かったので、『どうした?』みたいなノリから、そんな話をしたんだと思います。いいピッチャーなんだから、明るくいけよ、みたいなね。そんな言葉を覚えててくれて、言ってくれて、すいませんって感じです(笑)。嬉しいですね。そんなん覚えててくれたんだなーって」

 比嘉はそう言って笑う。そんな腰の低い36歳のベテランを敬愛する山本は、うなぎ上りの世間の評価に浮つくことなく、まっすぐに伸びていく。

 6月28日のプロ初完封について聞いた時、山本はこう語っていた。

「もちろん嬉しいですけど、お祭りまではいかないですね。シーズンはまだこれからというか、半分もあるので、いいピッチングをもっともっと積み重ねていきたいなと思います」

 オールスターゲームや後半戦でも、まだまだ衝撃的なピッチングを見せてくれそうだ。

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