猛牛のささやきBACK NUMBER
パ防御率1位・山本由伸は「万能」。
快投を支える気づきと勝利への欲求。
posted2019/07/12 07:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
7月10日の試合でプロ野球前半戦が終了した。2019年の前半戦で最も衝撃を与えた投手は、オリックス3年目の20歳、山本由伸と言ってもいいのではないだろうか。
昨年はリリーフとして主に8回を任され、54試合に登板したが、今年は志願して先発に転向し、開幕ローテーションに入った。
今季初登板となった4月3日の福岡ソフトバンク戦でいきなり快投を見せた。ソフトバンク打線を7回までノーヒットに抑え、最終的に9回1安打無失点。味方の援護がなく延長戦の末、引き分けに終わったが、ソフトバンクに対しては7月5日の試合の4回に失点するまで、27イニング無失点だった。6月28日の埼玉西武戦では初完投初完封勝利も挙げた。
前半戦は13試合に登板し、防御率1.92は、ソフトバンクの千賀滉大を抑え、パ・リーグ1位である。
「打たれたらキャッチャーの責任」(若月)
3年間ですくすくと伸びた体と心が、山本の今の立ち位置を築いている。
身長178cm、体重80kgと体格はプロ選手としては特別大きいわけではない。しかしストレートの最速は156kmに及ぶ。カットボールやシュートも150kmに届くスピードで変化し、フォーク、スライダーも一級品。リリーフではあまり投げなかったカーブも、今年はカウント球としても勝負球としても有効だ。捕手の若月健矢はこう語っていた。
「いい球をいっぱい持っているし、ボールの力で勝てていますね。フォーク、スライダーは一発で仕留めるというか、空振り三振を取るイメージ。カット、シュートはずらしてゴロを打たせられるし、カーブで緩急もつけられる。万能ですね。すごいと思います。打たれたらキャッチャーの責任だと思っています(苦笑)」
ランナーがいない場面では見せ球などは考えず、どんどん3球勝負を仕掛けていく。