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2007年の高橋由伸とタイプは違えど、
1番・亀井善行が勇気を与える理由。
posted2019/07/12 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
「僕にはあんな長打はないですよ」
巨人・亀井善行外野手は、その言葉にちょっと照れたように首を振った。
オールスター前の東京ドームでの試合前のことだった。
「1番・亀井は2007年の1番・ヨシノブの姿が被ってしょうがないね」
そう振ったときの亀井の反応だった。
2007年。前年に原辰徳監督が3年ぶりに監督復帰したもののリーグ4位に沈み、チームとしても4年連続で優勝を逃した。そこで復帰2年目のシーズンに原辰徳監督が、ペナント奪回の勝負手として打ったのが、開幕からの高橋由伸外野手の1番起用だった。
高橋はこの年、プロ入り10年目の32歳。中堅からベテランに差し掛かり、脂も乗り切る時期で、その実力からすれば当然、クリーンアップを任されて然るべき選手だった。
ところが、度重なるケガで満身創痍。'05年には右足首の手術などもあり出場試合は88試合に留まり、翌'06年も守備中のダイビングキャッチによるケガで2度の戦線離脱などもあり、2年連続で規定打席を割る97試合の出場に留まっていた。
そんな高橋の再生と、チームの活性化のために原監督が選んだ場所が「1番」だったのである。
切り込み隊長、リーダーとして。
当時は3番に小笠原道大内野手、4番にイ・スンヨプ内野手がいて5番は二岡智宏内野手、プロ7年目の阿部慎之助捕手が主軸打者に駆け上がってくる時期で6番か、二岡の状態次第で5番を打つというオーダーだった。
そこにケガから戻ってきた高橋をどう組み込むか。7番ではない。現在のように2番最強説もなく2番は「つなぎ役」という考えが主流で、そこには谷佳知という適役がいた。
「体調が万全なら確実に3割を打てる力があり、ガツンとスタンドに放り込める長打力もある。攻撃的に打って出てチームの道を切り開いていくバッティングは切り込み隊長というかチームのリーダーとして打ってつけだ」
こう評して原監督が選択したのが「1番・ヨシノブ」というオーダーだった。