猛牛のささやきBACK NUMBER
パ防御率1位・山本由伸は「万能」。
快投を支える気づきと勝利への欲求。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/07/12 07:00
前半戦を終わった時点でパ・リーグ防御率1位となったオリックス山本由伸。ファンからの期待も膨らむばかりだ。
終盤でも落ちない球威の理由。
また、試合終盤になっても球の威力が変わらないと若月は言う。
124球を投げて完封した6月28日の西武戦は、1回から155kmを連発しながら、8回に153km、9回に152kmをマークした。山本は言う。
「全然疲れはなかったです。むしろ自分は尻上がり。9回とかの方が感覚はすごく鋭い。投げるほどフォームがどんどんまとまっていい感覚になるし、力みがいい具合になるので、後半の方が楽に投げられている感じがします」
終盤のイニングでも疲れを感じない理由は、「力で投げていないから」だと言う。
「1年目は力で投げてたから、疲れたらもう投げられなくなっていたんですけど、今は力じゃないんです。だからいつでもスピードを出せるようになりました」
力ではなく、では何を使って投げているのかと聞くと、こう答える。
「力じゃない力。力を抜いた中で、力を出せる。体全体でしっかりボールに力を伝えられているという感じですね」
柔軟性と連動性を意識し始めた1年目のオフ。
転機はプロ1年目のオフだった。山本は1年目からファームで登板を重ね、33回2/3を投げて失点1、防御率0.27という驚異的な結果を残し、シーズン終盤に一軍で先発し初勝利も挙げた。ただ、一軍では5回を投げるのが精一杯で、登板翌日は痛みでキャッチボールもできない状態だった。
「今のままじゃ無理だ」
そう痛感した山本はその年のオフ、横浜DeNAの筒香嘉智たちと自主トレを共にした。そこで出会ったトレーナーや筒香に大きな衝撃を受け、考え方や練習方法は一変した。その直後の春季キャンプでは、「とにかくすごいんです」と目を輝かせていた。
多くは明かさないが、体の強さや柔軟性、連動性といったあらゆるものを同時に高められるトレーニングを教わり、チームに戻ってからも継続してきた。
ただ、昨年は、そこで会得したことをマウンドで思うように活かせなかったと悔やむ。
「やっぱり去年は8回の1イニングだったので、場面的にもすごく力が入ってしまって、やりたいことが全然できていなかった。中継ぎだと、抑えようとしすぎて、自然と力で投げちゃう。結果を求めすぎましたね。
今年は、自分が求めているものをぶれさせず、結果にビビらず、しっかりやっていけば、自然と結果がついてくるのかなと思ってやっています。最近やっと感覚がわかってきたというか、まだまだなんですけど、徐々に納得するところも増えてきたかなと思います」