プレミアリーグの時間BACK NUMBER
守銭奴オーナーがベニテスを放出。
2年目の武藤嘉紀がリベンジ開始。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/07/09 11:40
昨季は十分な出場機会を得られなかった武藤嘉紀(右)。新指揮官を迎える来季は横一線からのスタートになる。
ペレスの「売上」は軍資金になるか。
だがニューカッスルは、移籍市場でも損得勘定で動くオーナーが財布の紐を握っている。移籍ビジネスでの利益がすべて軍資金化されるかどうかは怪しい。
ベニテス体制下で2部リーグ優勝、プレミア10位と続いた昨夏にも、アシュリーが画策していた500億円近い額でのクラブ売却で魅力的な「餌」となる、トップクラスの指揮官(=ベニテス)を引き止める意味もあり、同様の予算増が噂された。
最終的には複数名の選手売却により5000万ポンド(約68億円)近い額を補強予算に加えることができたはずだが、今年1月にクラブ最高額で獲得されたMFミゲル・アルミロンを含めても、移籍金収入のすべてが予算に組み込まれたわけではないことは明らかだ。
今回、レスターから入る「売上」の軍資金化を伝える報道に、ニューカッスル出身の元エース、アラン・シアラーが、「爆笑」絵文字4つのツイートで反応した気持ちは理解できる。クラブによる発表とは裏腹に、ベニテスが新契約合意を諦めて去った今夏のプレシーズンを前向きに受け止められる者は少ない。
「経営方針」に異論を唱え続けた前指揮官が、違約金を発生させずに去ってくれたことを喜ぶオーナーと、前監督の下で出場機会に恵まれなかった選手ぐらいだろう。
低評価に危機感を募らせていた武藤。
その1人のなかに武藤嘉紀がいる。推定950万ポンド(14億円弱)での移籍1年目は、マンUとのリーグ戦というビッグゲームで決めた1点のみ。計18試合出場と、いかんせんプレータイムが足りなかった。プレミアでの先発は5試合のみ。テクニックは確かで、スピードも十分、フィジカルも決して弱くはなかったが、ベニテスが買ってくれているとは思えないままシーズンが終わった。
試合後の会見で武藤に質問が及べば、練習態度にしても、試合でのランやプレッシングにしても、私生活での英会話レッスンにしても、本人の「ハードワーク」を認め、「トライし続けて欲しい」と繰り返したが、しまいには「一生懸命やっているが足りない」と聞こえるようになった。
努めて前向きだった武藤自身も、シーズンが終わる頃には「戦力外にならないように」と、危機感を口にするようになった。