プレミアリーグの時間BACK NUMBER
守銭奴オーナーがベニテスを放出。
2年目の武藤嘉紀がリベンジ開始。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/07/09 11:40
昨季は十分な出場機会を得られなかった武藤嘉紀(右)。新指揮官を迎える来季は横一線からのスタートになる。
ファンは武藤を忘れてはいない。
監督なしでの始動は、ベニテスの存在を評価していたアラブ系資本へのクラブ売却商談がクールダウンした証拠とも受け取れる。
新戦力獲得よりも、既存戦力放出が先行する移籍市場でのスタートが物語ってもいるように、ピッチ上での白星よりも帳簿上の黒字へのこだわりが強い現オーナーが牛耳るニューカッスルは、前体制からのスタイル変更を伴う攻撃志向の新監督就任時はもとより、ベニテスに通じる堅守志向の人物が後任となった場合でも、まずは安全圏到達を目指す来季となってしまうだろう。
だが、武藤個人に関しては、監督交代がプラスに働く可能性がある。
ニューカッスルでは特にプラスアルファの力の源となり得る「12人目」たちも、昨季中は怪我による欠場や、アジアカップ出場による離脱もあった日本代表FWの存在を忘れていない。
1年目を「期待に添えなかった」と反省し、ファンの「素晴らしさ」を称え、「得点を多くあげてチームに貢献できるように全力を尽くす」と決意を表明したツイートは、ファンの間で好評。そこには、「とにかく、もっと試合に出られるようになるといい」と言う、筆者の散歩友達も含まれる。
来年の夏、日本人ストライカーがレギュラーを勝ち取っていたとしたら、「換金時」と判断するオーナーを「どうしたらそんな結論に」と嘆くことだろう。それはニューカッスル・ファンには申し訳ないが、日本人プレミア・ファンにとしては悪くない。
気づけば、アシュリー政権下で13年目に突入しているニューカッスルと、新監督の下で移籍2年目を迎える武藤の幸運を祈る。