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守銭奴オーナーがベニテスを放出。
2年目の武藤嘉紀がリベンジ開始。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto Press

posted2019/07/09 11:40

守銭奴オーナーがベニテスを放出。2年目の武藤嘉紀がリベンジ開始。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

昨季は十分な出場機会を得られなかった武藤嘉紀(右)。新指揮官を迎える来季は横一線からのスタートになる。

ベニテスを引き止める術はなかったのか。

 そのうえ2015-16シーズン終盤、降格の運命にあったチームを引き継いだベニテスは、現オーナー下で指揮を任された暫定監督を含む10名中、最高の腕前を持っていた。

 昨季後半戦、最終的にリーグ王者となったマンチェスター・シティから勝ち点3を奪い、優勝争いのライバルだったリバプールからのポイント奪取にも迫ったように、その戦術眼と緻密な分析により、相手チームとの戦力差を補うことのできる監督だ。

 ベニテスの手元に純プレミア級の持ち駒が増えれば、「復活」の夢が叶う日が訪れるのではないか? ファンが、そのような希望を胸に抱いたとしても無理はない。

 ベニテス自身も、経営陣にスタンスの変更を求め続けてきた。移籍市場での消極姿勢と、フロント主導の補強体制への不満を就任当初から口にしていた。退任前後のコメントからしても、「前に進み続ける意欲」、言い換えれば「金銭面での支援」に関する確約を取りつけられなかったことが、新契約交渉決裂の理由と思われる。

 個人的に得る「チャイニーズ・マネー」を理由に挙げる報道もあった。事実、16億円台と見られる新任地での年俸は、ニューカッスルが新契約交渉で提示した額の約2倍である。それでも、アシュリーが補強に関して歩み寄る構えを示していれば、6月後半には違った発表がクラブから出されていたはずだ。

 2005年にCL優勝を達成したリバプール時代から、イングランド北西部に家を持ち、北東部での過去3年間強も、ニューカッスルの人々と相思相愛の間柄となったベニテスは、「サッカーの発展途上国」のスーパーリーグではなく、「サッカーの母国」のプレミアリーグでの来季を選んだに違いない。

後任監督の予算は今夏の補強で補う?

『デイリー・スター』などの大衆紙では、ベニテスの後任監督には1億ポンド(約136億円)の補強予算が用意されているとも伝えられている。その半分は、今夏の移籍金収入で賄われるという。

 7月4日には、昨季リーグ戦でチーム最多の12得点を決めたアジョセ・ペレスのレスター入りが決まった。移籍金は3000万ポンド(約41億円)。5年前の獲得費用の10倍近い移籍金収入を得たわけだ。

 昨季トップチームで頭角を表わし始めたユース出身のMFショーン・ロングスタッフにも、マンチェスター・ユナイテッドなどが興味を示している。

【次ページ】 ペレスの「売上」は軍資金になるか。

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