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日本人設立の独クラブが5年連続昇格。
岡崎慎司と滝川二先輩の下剋上物語。
posted2019/07/09 17:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Takashi Yamashita
2018-19シーズンのヨーロッパサッカー界において、最も活躍した日本人はアイントラハト・フランクフルトの長谷部誠だろう。
3バックのリベロとして、ときに守備的MFとして、フランクフルトのEL準決勝進出に大きく貢献。ブンデスリーガでも突出したパフォーマンスを見せ、シーズン終了後にはキッカー誌が選ぶベスト11に選ばれた。
では、「MVP」が長谷部だとしたら、「敢闘賞」は誰だろう?
実は知られざる成功者が、フランクフルトから約40km離れた隣町、マインツにいる。
今年6月、岡崎慎司がアドバイザーを務めるFCバサラ・マインツが、ドイツ7部における昇格プレーオフを制して6部への昇格を決めた。
バサラは2014年に設立された日本人運営のクラブで、どこかを買収したわけではないため、ドイツ11部からのスタートだった。それから5年連続で昇格を果たし、ついに6部に到達したのである。
岡崎の2学年上、山下喬という男。
特に7部を戦った18-19シーズンは、戦力的にも予算的にも残留争いをするのが精一杯とみられていた(バサラの予算は7部のトップチームの3分の1程度)。しかし所属する日本人選手やドイツ人GKの奮闘によって、優勝争いに加わる。
最終的にバサラともう1チームが勝ち点トップで並び、エキストラの優勝決定戦でバサラはPK戦の末に敗れて2位になってしまったが、ホーム&アウェイの昇格プレーオフを制して6部への切符を勝ち取った。
5年連続昇格! アマチュアリーグとはいえ快挙と言っていい。
この快進撃の中心人物が、バサラの会長兼監督の山下喬(やました・たかし)だ。
山下は岡崎と滝川第二高校サッカー部の先輩・後輩(山下が2学年上)。偶然にも、岡崎が2013年夏に1.FSVマインツ05に加入したとき、山下は同クラブの育成部門でコーチをしていた。クラブとして生かさない手はない。山下はドイツ語を話せるため、通訳を務めることになった。
この再会が、予想もしなかったプロジェクトを誕生させる。