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サニブラウンだけじゃない記録の話。
女子やり投、100m障害で快挙の気配。
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph byKyodo News
posted2019/07/06 12:00
下段中央が北口榛花、右が木村文子。女子陸上界でもエポックメイキングな記録達成の気配が漂っている。
19歳で出した記録を26歳で更新した選手も。
女子やり投では優勝した北口だけではなく、2位になった森友佳までが世界選手権の参加標準記録を突破した。
62m88を投げたのだが、'18年までの自己記録から3m66という大幅な更新を果たす大飛躍だった。以前の自己記録は'12年、19歳のときに出したもので、26歳になって、7年ぶりに大きく記録を伸ばしたわけだ。
5月にやり投の強豪国、フィンランドに行って、代表コーチから肩の柔軟性の重要性について教わったことが、飛躍のきっかけになったという。本人は、世界の舞台で戦えるスタートラインに立っただけ、と語っており、'19年のうちに、また記録を伸ばす可能性はありそうだ。
100m障害は2番目に古い日本記録。
記録の面では、ワールドクラスとはちょっと開きがあるものの、興味深い勝負になったのが女子100m障害だった。
優勝は第一人者の木村文子で13秒14、2位は'18年の優勝者である青木益未で13秒15、3位は6年ぶりで陸上競技に復帰した寺田明日香で13秒16だった。世界選手権の参加標準記録は12秒98だから、まだ届かないが、いくつかの意味で、価値のあるものだったと言える。
第一に、金沢イボンヌが'00年に出した日本記録、13秒00の突破に向けては、木村、青木、寺田が可能性を見せた、ということだ。
日本選手権は、雨上がりでトラックが濡れた状態でのレースで、追い風0.6m、記録が出やすい条件とは言えなかった。天候、風の条件がそろえば、3人が13秒0台を出した可能性はあったはずで、陸上競技の女子では2番目に古い日本記録が、19年ぶりに塗り替えられる可能性があることを見せたレースだったと言える。
13秒02の自己記録を持ち、日本選手権では13秒20で4位だった紫村仁美まで含めれば、日本で初めての12秒台は、相当に見えてきたと言えそうだ。
100m障害の場合、世界選手権で決勝に残るためには、'17年の大会の準決勝を見ると12秒86以上のタイムを出さなければならなかった。したがって12秒台を出して、参加標準記録の12秒98を突破したとしても、決勝の8人に残るためには、まだちょっと届かないレベルだ。
ワールドクラスへの道のりにはまだ距離があるわけだが、ただ、31歳のベテランの木村、25歳で自己記録を出して2位になった青木、故障などがあって一度は第一線を退いて、長女を出産したあと、29歳で帰ってきた寺田と、個性のあるスプリンターが、独自の道のりの中で、日本で初めての12秒台を争っていくというのは、興味深いところだ。