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サニブラウンだけじゃない記録の話。
女子やり投、100m障害で快挙の気配。
posted2019/07/06 12:00
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph by
Kyodo News
2019年の日本陸上選手権は、かつてないほどの注目のされかたで、サニブラウン・アブデルハキームをはじめ、男子のスプリンターは陸上競技のファン以外にも認知度は上がったと言えるようだ。
ただ開催された6月27日から6月30日は、ほとんどの競技が雨の中で開催されたため、記録はあまり上がらず、日本タイ記録はあったが、日本記録は出なかった。
だが、'19年の大会では男子100m以外にも注目すべき記録、注目すべき勝負はあった。ワールドクラスの記録が出た女子やり投と、ワールドクラスの記録ではなかったが、興味深い勝負が展開された女子100m障害について見てみたいと思う。
女子のやり投では、北口榛花が5月に64m36の日本記録を出していた。'19年の世界ランキングでは10位にランクインしている記録だ。北口は、やり投を高校から始めてまだ21歳、記録を伸ばしている中、日本選手権での投てきが注目された。
1投目で62m68、4投目に63m68を投げて優勝を決めたが、内容は最近の成長ぶりをよく見せた優勝だったと言える。優勝記録は5月に出した日本記録とほぼ同等で、アベレージが上がっていることを見せただけでなく、1投目で62m68という記録を投げたことが重要だった。
というのは、世界選手権などの国際大会では、最初に予選を通過して決勝に残るという重要なステップがあって、予選というのは3回の投てきで通過しなければならないからだ。
'17年の世界選手権を振り返れば、予選の通過ラインは予選A組が62m58で、予選B組が62m29だった。つまり決勝に残るには、3投の中で間違いなく62m台を出すことが重要だと言えるから、日本選手権での1投目の62m68は意義深い投てきだったわけだ。
日本初の世界選手権8位の可能性?
日本選手権での記録について本人は、すごくうれしいというわけではないと語っていたが、約3カ月後の世界選手権に向けては、意味のある記録だったと言える。優勝記録の63m68は'17年の世界選手権なら8位に相当する。女子のやり投で、日本選手として世界選手権で8位以内はまだ出ていないから、北口が歴史を切り開く可能性大だ。
やり投を始めるまで、小中学校の時代にはバドミントンと水泳をやっていて、バドミントンでは小学校のときに全国大会に出場しており、日本代表で活躍している山口茜とは同学年で対戦したことがあるという。
バドミントンのスイングと、やり投の腕の振りには共通点があり、小中学校の時代にやっていたことが、やり投という競技につながっている、と言えそうだ。