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文武両道かつスポーツ万能。
やり投・北口が世界に挑む。
~バドミントンでは全国優勝も~
posted2019/07/14 08:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
陸上女子投てき界に現れた規格外のニューヒロインに、大きな期待が寄せられている。女子やり投の北口榛花(日大4年)だ。5月の木南道孝記念大会で従来の記録を56cmも更新する64m36の日本新記録をマークし、フィールド種目で東京五輪の参加標準記録突破の第1号となると、6月の日本選手権では安定した投てきを披露して圧勝。世界選手権(9月下旬開幕、カタール)の代表に初めて選ばれ、「勝ててうれしい。ホッとした」と笑顔を見せた。
文武両道を地で行くスーパー少女時代を過ごした。3歳で水泳を始め、北海道教育大学附属旭川小学校時代はバドミントンにも取り組み、小6で全国小学生大会で団体優勝を飾った。同中学校時代までは競泳とバドミントンの二足のわらじ。進学校で知られる旭川東高校に進むと、180cmに迫る身長とバドミントンで培った地肩の強さを見込まれて陸上部に入部し、やり投でいきなりインターハイに出場した。ちなみに高1の時は水泳でもインターハイ予選に出場。リオデジャネイロ五輪バドミントン女子シングルス代表の山口茜は、北口と全国大会で対戦したことを覚えており、「いろいろなスポーツをやっていてすごいですね」と舌を巻いている。
五輪での決勝進出は1964年が最後。
高1の秋から陸上に専念した北口はその後、高2でインターハイ、日本ユース選手権、国体の3冠を達成し、高3で世界ユース選手権金メダルを獲得した。しかし、'16年に日大に進学してからは苦しんだ。リオ五輪には参加標準記録の62mまで62cm届かず涙をのみ、'17、'18年は右ひじの負傷もあって記録は足踏み。現状を打開すべく、今冬にやり投の強豪国であるチェコに飛び、チェコ人コーチに課題の助走を改善するためのアドバイスを受けたことで一気に記録が伸びた。今夏はユニバーシアード大会(イタリア)に出た後、再びチェコに渡って合宿を行ない、そのまま海外を転戦しながら世界選手権に向かう予定だという。
女子やり投は'64年東京五輪を最後に決勝進出者がいない。「世界記録も、世界選手権や五輪の金メダルも目指したい」と語る北口が'20年東京五輪で56年ぶりに壁を打ち破れるか。世界で勝負する目安は68m台。まずは今秋の世界選手権でその足がかりをつかみたい。