【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER

スポーツとビジネスは衝突するか。
変化を起こすための絶対条件とは。 

text by

池田純

池田純Jun Ikeda

PROFILE

photograph byKyodo News

posted2019/07/05 08:00

スポーツとビジネスは衝突するか。変化を起こすための絶対条件とは。<Number Web> photograph by Kyodo News

盛況が続く横浜スタジアムでのベイスターズの試合。様々な改革がチームの人気向上を生んだ。

いいときもわるいときも正々堂々。

 もしかしたら、突然、よくわからないITの会社から球団史上最年少35歳で社長としてあらわれた私について「ビジネス優先でベイスターズや横浜の野球をダメにするヤツ」だというイメージが先行して大きな壁が築かれてしまって、すべてが疑問視からはじまっていたのかもしれません。

 でも今振り返って、ここ10年のベイスターズの変化がポジティブなものだったということには、ほとんどの人が同意してくれるはずです。ビジネスの観点ではもちろん、横浜という観点でも、横浜のプロ野球という観点でも、野球というスポーツの観点で見ても、格段に良くなった、進化したと感じているファンの方々が多いと思います。

 なぜそれが上手くいったかというと、野球の魅力、ベイスターズの魅力、さらには横浜の魅力の根幹はこれだという、ファンの既成概念を超えた発信ができたからだと思っています。正々堂々と、いいときもわるいときも、いつも考え方の根幹をファンにコミュニケーションする姿勢を貫き通したからです。

 あの時は、ベイスターズの何を絶対に守り貫いて、何を変えたいか、変えさせてもらいたいかを全部公言していました。そして10年後のベイスターズ、横浜スタジアム、横浜のプロ野球がどうなっているかというイメージを色々なところで何度も話しました。

 それには2つ効果があって、1つは意思決定の過程が見え、ファンと考え方が共有できること、もう1つが責任を取るリーダーの顔が見えることです。

プロ野球の9回制は変えられない。

 たとえばここ数年、野球の試合は時間が長いということが議論になっています。メジャーでも試合時間短縮はかなり優先度の高い課題ですし、日本でも同じです。

 それを短縮するために7回制にするという案も高校野球などでは出てきていますが、私はプロ野球においては、7回制には過去から大反対をしてきています。9回という長さがプロ野球にとっては極めて重要な歴史であり、そのうえに積み上げられた価値だからです。

 原理原則の「守るべきものであり、変えるべきものではない」からです。

 これを、変えなくてはいけないもの、変えてもいいものにするには、あまりに複雑過ぎて、ファンの感情を賛成の方向に導くコミュニケーションをするのが困難なものと私は判断するからです。

【次ページ】 意思決定の過程が表から見えない。

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
池田純

他競技の前後の記事

ページトップ