サムライブルーの原材料BACK NUMBER
小林祐希はいつも「人ファースト」。
欧州でも代表でも起業でも同じ哲学。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYuki Suenaga
posted2019/07/02 11:30
潰して、繋いで、飛び出す。小林祐希はクラブでも代表でも評価を受ける世界水準のマルチロールだ。
プレーの基本はコミュニケーション。
しかし満足度は「ゼロ」と言い切る。
「点が取れていない、アシストができていない以上は満足できないです。オランダの3年間で数字を出さないといけないというのは思い知らされてきたことですから」
代表でテーマにしているのが、「とにかくチームメイトとコミュニケーションを取ること」だった。
「どんな考え方なのか、どんなプレーを大切にしているのか、会話しないと分からない。たくさん話をしたし、たくさん観察もしました。こういう場面で裏に走りたい人なのか、足元で受けたいタイプなのか、分かっているほうがやりやすいですから」
多くのコミュニケーションを取り、それをプレーで活かそうとした。本当にその効果が出てくるのは、これからに違いない。
サッカーとの向き合い方が形になってきた。
ヘーレンフェーンからの退団を発表し、来季のプレー先にはスペインかイタリアを候補に挙げている。オランダを3年で卒業するのは「本当はもう1年早くて良かったんですけど」既定路線ではある。
新しい出会いを自分を引き上げていくその刺激とするために。
「サッカーのパフォーマンスが上がるように、トレーニングとかコンディションとかいろんなことを試してきて、ようやく自分のメソッドとして形になってきたなと感じています。次に僕が行くクラブで、そのガチッと固めたものを出していきたいんです。もちろん3年後のワールドカップに向けても。これからの自分を凄く楽しみにしている」
小林祐希は「一挙一動」を地で行く人だ。
日頃から細かく自分を見つめ、必要だと感じたものを取り入れようとしてきた。トレーニングでも、食事を含めたコンディション管理でも。
試合後は必ず映像で振り返ることをルーティンにする。
「毎試合、自分でテーマを決めています。このスペースが空くからこうなりそうだなとか考えて試合に入るので、それが出来たかどうか。やるべきことは大体同じなんですけど、ボールを何回受けたか、いいパスは出せたか、シュートまで行けたか。闘っているか、球際に行けているか、ちゃんと動けているか、そういったものを見ます。あとは1週間こういう練習をやってきて週末の試合でどうだったのか、データの部分もチェックする。細かい体の向きとか、そういうところも」
この振り返り作業をずっと続けてきた。
フットボールファースト。
その生き方は、小林祐希の未来にきっと反映される。