サムライブルーの原材料BACK NUMBER
小林祐希はいつも「人ファースト」。
欧州でも代表でも起業でも同じ哲学。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYuki Suenaga
posted2019/07/02 11:30
潰して、繋いで、飛び出す。小林祐希はクラブでも代表でも評価を受ける世界水準のマルチロールだ。
3シーズンで100試合に出た信頼感。
パイプを練習から太くしていれば、言わずとも肌感覚で分かってくる。彼が3シーズンにわたってコンスタントに出場してきたのも、外せないリンクマンであることをピッチ上で証明してきたからにほかならない。
「この3年間で随分とコミュニケーションを取れるようになったのは、ヘーレンフェーンでの大きな財産。そしてもう1つは、3シーズン通して100試合近く(公式戦に)出場できた。ポジション争いのなかで出る、出られないはあったとしても、どの監督だろうがある程度必要とされてきたというのは自信になりました。
どのポジションで出るにしても課せられたことを100%こなしたうえでプラスアルファを出していく。その部分を数字で示すことはできなかったけど、チームにとって重要な役割は果たせたところはあるんじゃないかって思っています」
プラスアルファとは、得点にもドンドンと絡む働き。ゴール、アシスト合わせて「10」というノルマを己に課すなかで、今季は8アシストをマークした。
「怖さを見せつけておかないと」
攻撃もさることながら近年、売りになっているのが激しい守備だ。
昨年12月のNAC戦。味方が1人少ない状況で、小林もタッチ際でスライディングタックルを浴びせて一発レッドを食らった。カウンター発動を阻止するために体を張ったことは、ヤン・オルデン・リーケリンク監督も理解してくれたという。
「あのシーンよく見てもらえると分かるんですけど、相手には当たっていないんです。監督は試合後に“一番、闘っていた”と言ってくれました。試合の流れによっては、ファウル覚悟で行かなきゃいけないときがある。そこはこだわりましたね。
アイツまた激しく来るよって思わせることが大事。ビダルだって、カゼミーロだって、カンテだってガツンと行くから、相手はいつもならターンして前を向こうとするところをやってこない。日本だとノーファウルで横に横に逃がして、後ろに下げさせればOKっていう守備が多いじゃないですか。でも欧州では違う。前に行って、怖さを見せつけておかないと。ちょっと悪童っぽくならなきゃいけないところもあるんですよ。
自分たちがボールを保持したいがために、ボールを持っている人に食らいつくだけ。奪えれば何でもいい。自分で取れなくても、相手に体をバーンとぶつけて体勢を崩して次の人が取ってくれるならそれでいい」
チームのために汚れ役を買って出る。その結果、チームトップのタックル成功率、ボール奪取率を叩き出した。堂安律、板倉滉が所属するフローニンゲンとの4月のホームゲームでは堂安からボールを奪ってチャンスにつなげている。