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佐藤悠基が語るMGCへの決意・前編。
「2時間7、8分じゃ勝負にならない」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2019/06/30 17:00
高橋尚子もダークホースに挙げるなど、佐藤悠基はMGCに向けて着々と準備を始める。
ライバルの情報は「はっ?」って。
マラソンに向けての強靭な足作りが続いていくわけだが、MGC前までのスケジュールはほぼ確定している。
7月ゴールドコーストでハーフを走り、ホクレンロングディスタンスでのレース(1万m予定)を終えた後は疲労を抜く。それからスイスのサンモリッツ(標高1800m)で3週間ほど合宿を行う。
その後、一度、東京に戻って暑さに慣れ、最終調整は北海道の千歳で行うという。日常的には2500メートルの高地に設定した低酸素ルームで睡眠を取り、vo2maxという数値などのデータ管理も行っている。本番に向けて万全を期していくが、ライバルたちも着々と戦う準備を進めている。
――ライバルの動向は気になりますか。
「いや、情報が入ってきても『はっ?』という感じです(笑)。人のことを気にするよりも自分のことに集中してやった方がいい。レースでも、基本的に他の選手のことを意識しません。意識してもその選手が早い段階で落ちていくと拍子抜けしてしまう。なので前半はいかに自分が余裕を持ってレースを進めることができるかに集中しています。気にするのは給水をしっかり摂るとか、ストレスのかからないポジション取りを意識するぐらいですね。
ただ、日本選手権の1万mで勝っていた(4連覇)時は多少意識していました。勝たないといけないというプレッシャーがあったので、周囲の選手がどんな感じで走っているのか、マークしながらレースを進めていました。トラックは後半、一瞬の動きで勝負が決まるからです。でも、マラソンはレース後半にキツくなると意識する余裕がなくなるので周囲の選手にそこまで気を使わない。マラソンは細かいところを気にしてしまうともたないものですから」
瀬古が推す、佐藤の高い総合力。
そう語る表情には余裕と自信を垣間見ることができる。これまで日本選手権を始め世界選手権、五輪と厳しいレースを戦ってきた。その経験値はMGCに出場する選手の中では随一であるし、マラソンについても2013年から走り、熟知している。もちろんマラソンへの耐性を持った強い体作りにも慣れている。そうした総合力の高さを踏まえて、瀬古は佐藤を推すのだろう。
「MGCのコースを下見してきました」
佐藤は、冷静な声でそう言った。
MGCのコースを見て、何を感じたのだろうか。
(後編に続く)