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浦和の「正直さ」を上回った蔚山。
サイド狙いで薄まった縦の選択肢。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/06/21 11:15
杉本健勇の先制点を守りきれず逆転負け。浦和にとって2年ぶりのACL制覇は険しい道となった。
大槻監督が口にした守備の方法。
武藤の言う通り「精度」の問題とも言えるし、浦和のスタイルを熟知したうえで、蔚山が堅守速攻という武器を示した、とも言える。
「蔚山のカウンターは警戒していた」と浦和の選手たちは試合前から口にしていた。ましてやホームでの失点は、ノックアウトステージでは重いこともだ。
試合後の監督会見で、大槻毅監督は守備の方法について問われて次のように答えている。
「(相手ボールのときに前から行くのではなく、待つような守備にしたのは)スピードや高さを踏まえて、スペースを与えなくなかった。あとはホームで失点したくない部分もあり、いろいろな思惑があって、ああいう形になった」
それでも失点してしまった。このままホームで、同点で終わるわけにはいけない。浦和は勝ち越し点を奪おうと攻めた。しかし、それは蔚山から見れば「浦和がどう来るのか」が予測しやすくなることと同義だった。
蔚山は攻め急がずカウンターで。
守備がハマり、安定感が増してくる。蔚山はチャンスと見れば浦和DF陣の裏を狙って攻め入る場面もあったし、それがうまくいかなくても、焦れることはなかった。
ボールを持つことに執着せず、逆に浦和にボールを持たせている。そんな流れだった。時計の針が進むにつれて、浦和は攻撃のギアを入れようとするものの、追加点は遠い。アウェイでの1-1を良しとする蔚山は、攻め急ぐこともなく、時間を消化しようと努めていた。
そして、81分。
自陣左サイドでボールを奪ったパク・チュホからのパスをキム・ボギョン(元C大阪、松本。現在は柏からのレンタル)が素早く途中出場のファン・イルスへ渡す。長い距離をドリブルで運んだファンは、味方へのパスという選択肢を残しつつ、ミドルシュートを放ち、逆転弾を叩き込んだ。
浦和が警戒していたカウンターでの失点だった。