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浦和の「正直さ」を上回った蔚山。
サイド狙いで薄まった縦の選択肢。
posted2019/06/21 11:15
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
「ボールを回してチャンスを作るという浦和の特長。(グループリーグで対戦した)川崎もそうでしたし、韓国でもそういうチームが増えている。だから、パスを繋がれても落ち着いていた。1点獲られても、自分たちのペースで戦えた」
試合後、蔚山現代のパク・チュホは、丁寧な日本語で試合を振り返った。
水戸、鹿島、磐田とJリーグで過ごし、スイスやドイツで経験を積んだ32歳のサイドバックの言葉通り、37分に先制点を許した蔚山が、浦和を逆転するという展開だった。
6月19日、ACL決勝トーナメント1回戦ファーストレグ、浦和vs.蔚山。この日の浦和は杉本健勇を1トップに置き、興梠慎三と武藤雄樹の2シャドー、青木拓矢とエヴェルトンのダブルボランチと微調整したシステムで挑んだ。攻撃時には右の森脇良太、左の山中亮輔も攻め上がり、サイドに広くコンパクトな陣形で蔚山陣地へと押し込んだ。
明確な狙いを持ったサイド攻撃。
「相手がしっかりとブロックを作って守ってくることは想定していたし、サイドへ速くボールを入れるなど狙いを持って攻撃して、チャンスを作れた。あとはシュートの精度の問題。今日は決めるべき場面で決めきれなかったので、申し訳なかった」
武藤の言葉からは、浦和は蔚山攻略のために「明確な狙い」を持って試合に挑んだことが分かる。先制点の場面は、ピッチ中央でエヴェルトンの縦パスを興梠が受けて落とし、それを拾った青木のクロスを杉本が頭で合わせた。
徹底したサイド攻撃があったからこそ、中央でのポストプレーが相手DF陣のスキを突くことに繋がったのだろう。
しかし前半終了間際、それまで右サイドでプレーしていたイ・グノ(元磐田、G大阪)が左でボールを受け、素早いクロスを中央へ蹴り込む。それをチュ・ミンギュがDFに囲まれながらもヘディングシュートで叩き込み、1-1の同点。記録上、蔚山の前半のシュートはこの1本だけ。かたや浦和は9本のシュートを放っている。