水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
久保建英のキックに水沼貴史が注目。
メッシ、ロナウドと同じ素質とは?
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byGetty Images
posted2019/06/14 12:00
エルサルバドル戦で痛烈なシュートを放った久保建英。水沼貴史氏によるとこれも1つの伏線だったという。
野球の投手の「真っ直ぐ」と同じ。
Jリーグでもニアをぶち抜くシュートや、FKで逆サイドにドーンって蹴り込むゴールを決めています。育成年代の時からそこが彼の魅力だった。決してテクニックだけの選手じゃないんですよ。
世界に目を向けてみると、メッシもそう。テクニック、スピード、ドリブルばかりが注目されますが、強いキックやシュートに“絶対的なもの”がある。それがあるからこそボールに変化をかけたり、チップキックで浮かしたり、違いを魅せることができる。強いボールを蹴れるという点は、久保の一番の武器だと思いますよ。
よく野球でたとえるんですが、良いピッチャーって「真っ直ぐ」をしっかり投げられる選手でしょ? 速い球があるから打者には変化球や落ちる球が効いてくるわけで。野球にしてもサッカーにしても、要は土台がないと、いろいろな技を持っていても通用しない、壁にぶち当たるんです。
また、強いボールを蹴れる人はキックフェイントを有効的に使えるんですよね。僕はかわすテクニックの中でキックフェイントが一番効くと思っていますから。クリスティアーノ(・ロナウド)だって強いシュートを打てるから、切り返しが効くわけです。
その素質を久保は持っている。まぁ、だからと言って、すぐにメッシやクリスティアーノになれる訳ではないんだけどね(笑)。
アウダイールの股を抜いたら……。
現在、Jリーグではある程度できる手応えを持っていると思いますが、確固たる自信までには至っていないと思います。もちろん、自信を持っているとしたら、それはそれでとても良いことですが、これから臨むコパ・アメリカでは、自分のプレーが通用するか否かをしっかり感じ取ってきてほしいですね。
コパ・アメリカで対峙するであろう選手たちは、タックルひとつとっても、強度と深さが桁違いですからね。頭で理解するのと、肌で感じるのではまた別の話ですから。
タックルで思い出したんですが、ちょっと古い話をしてもいいですか?
実は僕も1989年に錚々たるメンバー(のちにアメリカW杯を制覇)のブラジルと対戦したことがあります。対峙したのはブラジル屈指のDFアウダイールだったんですが、彼の股を抜いて「お、やった!」と思った瞬間に後ろから足をスコーンとやられたんです。「お前、ふざけるな!」みたいな感じで。映像、どこかに残ってないかな……(笑)。
もちろん、現代のサッカーと置き換えることは難しいけれど「やっぱり『世界』を舐めちゃいかんな」と思いました。