【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
さいたまスーパーアリーナは奇跡だ。
国内最強の超設備と、唯一の弱点。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byGetty Images
posted2019/06/12 07:00
2019年のフィギュアスケート世界選手権の会場となった、さいたまスーパーアリーナ。日本随一の屋内施設だ。
最大で3万7000人、6000席ホールも。
バリエーションとしては、全体を1つのイベントで使うスタジアムモードが一番大きい形で、これが3万7000人はいります。
壁を動かして、2万2500人はいるメインアリーナモードと7500平米のコミュニティアリーナの2つに分けることもできます。つまり、2つのイベントを同時に開催することができる。しかも、片方でどれだけ音を出してももう片方には何も聞こえません。
あとはクラシックコンサートで使うような舞台と客席の形で、6000席の超大型ホールにすることもできます。
どの形でも、座席は壁や地面に収納されていて自動で出てきます。しかも普通なら座席ってプラスチックが多いんですが、スーパーアリーナは全部布です。これは理由があって、コンサートの音響を考えた時に、プラスチックだと反響してしまうので布で吸収性を上げている、とのこと。もちろん壁も音響に最適なものを使っているそうです。
こういった1つ1つのディテールは、最初に「何に使うか」「どうやって使うか」を想定していないとできないことなので、本当に考えて作ったんだろうなと感心します。
実際に使う機会はあまりないそうですが、アメフトのスタジアムとして使用するための人工芝も完備されています。
細かいところまで最強のアリーナ。
あとイベント開催者が喜ぶポイントとして、天井が降りてきて照明や音響機材の取り付けが地面でできること、大型トラックの動線がアリーナ中央まであるので積み下ろしからセッティングまでがすさまじく便利、というのも地味ながら重要です。
お客さんに直接は関係ありませんが、主催者の負担が減ればコンサート時間を調整できたりチケット価格に反映できたり、という恩恵はあるはずです。
他にも挙げればキリがないので列挙するだけにしますが、防災活動拠点にもなっていますし、雨水の濾過装置や自家発電もあって、屋根一面には太陽光発電のパネル、壁面は緑化……。
男性アイドルのコンサートなどで女性客が多い時は男子トイレの一部を女子トイレに変えるための設備があったり、細かいところまでとにかく最強のアリーナなんです。