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グランパスの何が革新的なのか。
風間サッカーの“翻訳”を試みる。
posted2019/06/07 08:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Keiichiro Natsume
一般的なチームの攻撃は、混み合っている中央を迂回し、サイドへボールを運んでから、次の一手を探るのが常套手段だ。
クロスを上げてもいいし、突破力があればドリブルを仕掛けてもいいし、相手の目線をうまくずらすことができたら一気に斜めのパスを出してゴール前へ迫ってもいい。
いい手が見つからなかったら、バックパスと横パスを交えて逆サイドにボールを移し、再び同じことを繰り返す。どのリーグでも、よく見かける典型的な“ポゼッション”の光景だろう。
攻撃にはスペースが必要だ、という考えが土台にある。
しかし、名古屋グランパスを率いる風間八宏監督の頭の中には、まったく別の絵が描かれている。
風間サッカーの異様さ。
スペースへ逃げず、自ら密集をつくり、そこに飛び込んでどつき合いを挑むというクレージーなサッカー。グランパスの“いい時間帯”を見れば、その異様さは一目瞭然だ。
ペナルティエリア付近に7、8人の選手が押し寄せて極度の密集をつくりだし、そこへボールを送り込む。少しでもトラップミスしたら、すぐに奪われるような敵との距離感だが、選手たちに躊躇は見られない。
「止める・蹴る・運ぶ・外す」の4大技術を大切にしているという点では、川崎フロンターレ時代から変わりはない。そういう選手としての基礎を、風間監督は「絶対」と呼ぶ。
だが、絶対は保ちつつ、ペナルティエリア付近の人数の掛け方が度を越している。川崎時代も十分に攻撃的だったが、それを別のロジックによってさらに過激にしようとしている。
風間監督が名古屋に来て3年目、いったいどんなサッカーを創り出そうとしているのか?
5月、Number本誌の企画で風間監督にインタビューする機会を得た。テーマは「天才論」だったのだが、自ずとグランパスの話につながっていった。今回はそのときに聞いた内容をもとに、風間サッカーの“翻訳“を試みたい。