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クロップの運か、ケインの帰還か。
CL決勝の趨勢を決める重要な要素。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byAFLO
posted2019/05/21 17:00
リーグ全体の競争力の高さが今季のCL決勝プレミア対決を生んだと言える。ビッグイヤーを獲得するのはトッテナムかリバプールか。
ケインが中央で辛抱できるか。
ケインはトッテナムの大エースだ。今シーズンは左足首の故障に苦しみ28試合の出場に終わったものの、トップスコアラーのマネ、サラーとは5ゴール差の17得点を挙げている。フル稼働できていたら、あと5、6試合ほどピッチに立てたら、2シーズンぶりの得点王に輝いていたに違いない。
しかし、執拗なマークを嫌ってサイドに流れ過ぎる悪癖がある。サイドで基点になったり、彼が空けたスペースに2列目が進入したり、ケインの動きが無駄になっているわけではないが、やはり大エースは真ん中でドーンと構えているべきだ。
ケインがどれだけ辛抱できるか、ファンダイク、ジョエル・マティプ(あるいはジョー・ゴメスか)のマークを楽しめるような余裕を持てるかが、トッテナムを大きく左右するはずだ。
また、ローズ、オーリエ、エリック・ダイアー、ダビンソン・サンチェスなど、ボールコントロールにやや不安のある選手はスタメンから外してはどうか。パスを受ける姿勢が悪かったり、トラップがほんの少しでもズレたりすると、ゲーゲンプレスの餌食になる。自陣でボールを失い、サイドも制圧されると、挽回できない。
クロップ監督には嫌なジンクスが?
同国対決は通算7回目、プレミアリーグ勢同士は2007-08シーズンのマンチェスター・ユナイテッド対チェルシー戦以来11年ぶり2回目となる。
リバプールは昨シーズンに続き、通算9回目の決勝進出。一方のトッテナムはクラブ創設137年にして、初のファイナリストだ。経験則では相手にならないが、リバプールのユルゲン・クロップ監督には嫌なジンクスが付きまとう。カップファイナルを7回経験し、わずか1勝……。
いや、データはあくまでも目安だ。ビッグファイトならではの高揚感が、否定的要素を打ち消してくれるだろう。リバプールもトッテナムも、幾多の困難を克服しながらファイナリストの座を勝ち取った。決勝の地ワンダ・メトロポリターノでも、リスクを恐れぬ積極的なファイトで世界中のフットボールファンを魅了するに違いない。
かのウィンストン・チャーチルはこう言った。
「成功とは、失敗を重ねても努力を続けられる才能のことである」