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クロップの運か、ケインの帰還か。
CL決勝の趨勢を決める重要な要素。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byAFLO
posted2019/05/21 17:00
リーグ全体の競争力の高さが今季のCL決勝プレミア対決を生んだと言える。ビッグイヤーを獲得するのはトッテナムかリバプールか。
トッテナムの不安要素は両SB。
リバプールが決勝で相まみえるのは、同じプレミアリーグのトッテナムだ。リーグでは今シーズンもホーム、アウェーともに2-1で退けている。クロップ体制下の4シーズンの戦績も3勝4分1敗。ただ、3勝のうち2回が1点差であり、試合終盤にゴールが決まる劇的な展開の連続だ。両チームの間に大きな実力差はない。
リバプールがバルセロナ戦で奇跡を演じたように、トッテナムも準々決勝のシティ戦、準決勝のアヤックス戦をドラマティックな展開で勝ち抜いてきた。左足首の負傷で大詰めの6試合を欠場したハリー・ケイン、疲労のために動きが鈍ったヤン・ベルトンゲン、トビー・アルデルバイレルトも、体調を整えて決勝の舞台に立つ公算が大きい。
しかし、トッテナムは両サイドバックに不安がある。
ロシア・ワールドカップの疲労を引きずったキーラン・トリッピアーは精彩を欠き、マウリシオ・ポチェッティーノ監督の信頼を失う期間もあった。ただ彼に代わる右サイドバックは戦術理解力に難があるセルジュ・オーリエだ。左サイドバックのベン・デイビスは堅実だがスピードは並で、ダニー・ローズは、クロスに雑さがある。
一方、リバプールの両ウイング、マネとサラーの破壊力は世界でもトップランクだ。ファンダイクが操る絶妙のフィードも含め、トッテナムの両サイドを自陣にくぎ付けすることも可能だ。
アーノルド&ロバートソンの成長。
そしてサイドバックである。
右にトレント・アレクサンダー・アーノルド、左はアンドリュー・ロバートソン。リバプールの両サイドバックは急速に成長している。ファンダイクの的確なコーチングに助けられもしたが、攻撃参加のタイミングに成長の跡が見られ、リバプールの得点力アップ(昨シーズン比+5)にひと役買った。
しかもA・アーノルドは精度の高い右足でプレミアリーグ記録となる12アシストを記録し、ロバートソンも正確な左足で11アシスト。ふたり合わせて23アシストは、プレミアリーグ全体のサイドバックが記録したデータの17%に、リバプールの総得点では26%に相当する。
一方、トッテナムは先述した4選手を合わせてもわずかに8アシスト。デイビスはゼロに終わった。闘い方の違いこそあるものの、分が悪い。
さらに、リバプールのA・アーノルドとロバートソンは後半の追加タイムでもスプリントを繰り返せるが、トッテナムのサイドバックは機動力とスタミナでやや苦しい。チャンピオンズリーグ決勝でも、このポジションの実力差が勝負を分けるのではないだろうか。