ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
試合前後に選手たちはどう過ごすか。
「お一人様」が増えた日本ハムの強さ。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2019/05/13 16:30
勝利の瞬間を迎える10時間も前から選手たちの準備は始まっている。チームは5月12日現在、首位と2.5ゲーム差の2位につけている。
トップ選手の自己管理に通ずるもの。
ここまで数例を記したが、試合前後に練習をする、その量が豊富なのが良い、その是非論ではない。
トップ選手には自身の水準を上げる、または維持するための流儀があるのだと感じている。最高のパフォーマンスを発揮できるように自己管理できる、高い意識が顕在している。
行動パターンとして分かりやすい例を挙げたが、あえて積極的に肉体を休める時間を作るように努めている選手もいる。卓越した技術などを発揮するための最善策として、それを選択している。
総じて言えるのは、一定のレベルに到達している選手ほど周囲に流されることが極めて少ない。練習すること、積極的に体を休めること……。ポリシーを持って、貫ける力強さを持つ。それぞれにパターンはあるが、1つだけ共通点がある。
1人である――。
行動の大半が単独で、良い意味でマイペース、自分の間合いで時間と付き合っている。
小笠原、ダルビッシュ、大谷も。
現在のファイターズで言えば第一線を走り続けている田中賢介選手と鶴岡慎也選手兼任バッテリーコーチ、金子弌大選手は、わが道をいくようにルーティン、時間を消化しているように映る。かつて在籍した中日小笠原道大二軍監督らトップOB、米大リーグのカブス・ダルビッシュ有選手やエンゼルス大谷翔平選手も若くして、そうだった。
野球はチームスポーツだが「個」の集合体で成立している。入団間もない若手選手は右往左往して当然で、何人かで連れ立って自主練習をしているシーンを一、二軍に関わらず目にする。トップ選手に近づいていけばいくほど1人の時間が増え、自らを律して練習、肉体や時間など諸々の調整をしている姿を、これまでも多く見てきた。
野球界だけではなく、一般社会でも同様だろう。チームで何かを成し遂げようとする時には「個」の力も問われる。試合でも「投手vs.打者」の局面は、1対1の勝負である。「個」と「個」のぶつかり合い、その成否が野球の結果へと反映されるのだと思う。
説明不要で、今シーズンもファイターズは若手主体の編成ではある。広報を務めてからの過去2年と比して、試合前後にバックヤードで孤独に過ごす選手の姿がよく目に入る。
2019年。試合前後のバックヤードに多数、潜んでいる「お一人様」にワクワクしている前半戦である。