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大本命不在のヴィクトリアマイル。
日本が大切に育てた血統が勢揃い。

posted2019/05/11 08:30

 
大本命不在のヴィクトリアマイル。日本が大切に育てた血統が勢揃い。<Number Web> photograph by Kyodo News

昨年は大接戦を制したジュールボレールがGI初制覇を成し遂げた。今年はどんなドラマが待っているのだろうか。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Kyodo News

 古馬のマイル女王を決める第14回ヴィクトリアマイル(5月12日、東京芝1600m、4歳以上牝馬GI)が近づいてきた。

 比較的新しいレースではあるが、過去の勝ち馬には、ダンスインザムード、ウオッカ、ブエナビスタ、アパパネ、ストレイトガールなど、「名牝」「女傑」と呼ぶにふさわしい馬たちが名を連ねている。

 過去の勝ち馬も、また、今年の出走馬も、母や祖母が輸入牝馬という新しい血を持つ馬が多い。そんななか、何代にもわたって母系の血をつながれてきた馬たちもいる。

 過去の勝ち馬では、2009年にここを7馬身差で圧勝したウオッカがその代表だ。ウオッカの11代母は、1907年に岩手の小岩井農場によって輸入されたフロリースカツプ。100年以上にわたって日本で大切に育まれている「小岩井の牝系」出身なのである。

 同じく、'12年の勝ち馬ホエールキャプチャも小岩井の牝系出身で、12代母が前述のフロリースカツプらとともに輸入されたビユーチフルドリーマーだ。

 フロリースカツプの子孫には、ウオッカのほか、ニホンピロウイナー、シスタートウショウ、スペシャルウィーク、メイショウサムソンなど、ビユーチフルドリーマーの子孫にはホエールキャプチャのほか、シンザン、ニッポーテイオー、レオダーバン、テイエムオーシャンなどがいる。

小岩井は、創設者3人の頭文字。

 今は乳製品なども製造する総合農場として知られている小岩井農場は、1891(明治24)年、鉄道庁長官の井上勝と、三菱財閥を創始した岩崎彌太郎の弟で、三菱社社長の岩崎彌之助、日本鉄道会社副社長の小野義真の3人によって創設された。

 この3人の頭文字から「小岩井」と命名された。不毛の荒野を切り拓き、国策であった殖産興業の一環である畜産振興に貢献すべく、家畜の育種改良、すなわちブリーダー事業を推し進めた。

 1899年に岩崎家の所有となり、彌太郎の長男の岩崎久彌が継承者となる。そして、宮内省主馬頭だった藤波言忠を監督として、また、下総御料牧場長の新山荘輔を場長として招聘する。

 財閥が所有する小岩井農場と、皇室お抱えの下総御料牧場は、のちに初期の日本ダービーを勝ったり負けたりするライバルとなるのだが、国力を増強させる「活兵器」である馬匹の改良に、官民一体となって取り組んでいたのだ。

 1907年に、小岩井の牝系となる21頭の繁殖馬(1頭は牡馬)をイギリスで選定したのは、場長を退任し顧問となっていた新山であった。

 こうして小岩井農場は本格的なサラブレッド生産を開始する。上記のほか、アイネスフウジン、ヤエノムテキ、メジロマックイーン、ヒシミラクルなども小岩井の牝系出身だ。GI級レースの勝ち馬をすべて挙げると膨大な量になるので、ここにはほんの一部だけを記した。

【次ページ】 メイショウオワラとデンコウアンジュも。

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